【シャープ横断♪バトンリレー】第34走者◆合弁会社設立、経産省でWTO関連業務、ロボホン!法務のスペシャリストを目指す日々

清水さんからバトンを受け取ったものの、何を書いたらいいか、このバトンリレーのことで頭がいっぱいで、年末年始のお休みは夜しか眠れなかった、法務部の小野と申します。

2005年の春に入社しましたので、今年で入社20年になります。西田辺の本社ビルと道路を挟んで向かいの田辺ビル2階に法務部はありました。角部屋で、長池公園の桜が見えたことを覚えています。

↑2018年に田辺ビルを個人的に再訪したときに撮影

最初に配属されたのは、コンプライアンスを専門にするグループでした。独占禁止法や下請法を中心とした法律相談や監査を行うグループで、調達本部の方々と一緒に、各事業本部を訪問し、発注書面の抜き取り検査をしたり、競合他社とカルテルにつながるような接触はないかをヒアリングする、そんな業務を行っていました。

ある日、上司が息づかい荒く席に戻ってきて「大変なことになった」とつぶやきました。法務部の部屋を管理職がバタバタと動き回っていて、耳を澄ますと、「リーニエンシー・・」などという言葉も聞こえます。「リーニエンシー」とは、ちょうどその頃に日本に導入された、カルテルを早く当局にタレこむとその順番に課徴金が減免されていくという制度でした。

「ん?どういうこと??」とその日はよく分からず帰宅しましたが、その日を境に私は日常業務が全くできない状況となりました。

シャープが液晶パネルの価格カルテルを行っていた疑いで、日本とアメリカ、EUの競争当局から、同時に調査を開始するファックスを次々と受け取っていたのでした。

その日から、関係者の資料やプリントアウトされたメールが入った段ボールが続々と法務部に持ち込まれ、私はそれらの資料を弁護士事務所に送るため、全てをコピーし段ボール詰めして郵送するという業務を延々とする毎日を送ることになりました。始業から終業まで、一日中ずっとコピーし続ける日々はかなり精神的に辛かったです。紙で手先をよく切ってしまい、絆創膏だらけになった指でコピー機に一日中張り付いていると、もはや自分がコピー機と一体化してしまうのではないかとすら思いました。 

コピーだけをしていて私は何をやってるんだろうと大きくなる不安な気持ちを、「いや、こんな大変な事件を内側から見ることができるのはそうそう経験できるものじゃないから、法務部員としてきっと意味はある・・」と自分を励ましながら過ごしました。20年後にこうやって皆さんにこの日々を伝えることができましたので、あの頃の不安な気持ちも成仏してくれたと思います。

「カルテルをすると、会社の業績はもちろん、日常全てが吹っ飛ぶ」ということを身をもって体験した2年目でした。

その後、契約審査を行うグループに異動しました。契約業務は、それぞれが自分の契約案件を持ち、まずは一人で依頼部門の方からヒアリングし一次案を作る、という業務スタイルであること自体が新鮮でした。

国際契約や合弁会社設立なども多くあり、上司や先輩方はそれぞれの案件で忙しくしている環境でした。思い出深いのは、パイオニアと作ったブルーレイ事業の合弁会社、PDDMの設立です。

私は下っ端で、外部の弁護士やコンサルタントの話している単語や文章はほぼ理解できないような状況で過ごしていたのですが、ある日、事業開発室(今の戦略投資部)のマネージャーの方が来られて、「この案件で起きた問題、法務としてどう考えているの」と詰め寄られました。その時関係する上司も先輩も不在で、私しかいなかったのですが、「分かりません・・すみません・・」と答えることしかできず情けない気持ちと焦りで軽くパニックでした。その後もそのマネージャーの方に、夢の中でも詰められて「すいません、分かりません」と言ってうなされたりしたこともありました笑。今思い返すと、大して経験もない私に、プロフェッショナルとして相対してくださったんだなという気もして「法務としてのプロフェッショナリティー」を意識するきっかけになりました。

その後、八尾の健康環境事業本部の法務グループへ異動しました。法務グループは3名の小さな所帯で事業本部の法務案件をすべて見る必要があったので、とても忙しかったのですが、とにかく楽しかった。色んな事業部の方々が周りに座っていて、台車に乗せた製品を運んでいるのが見えたり、エイジングでごーっという音がするエリアを横切ったり。モノが作られている現場のそばに居るということに幸せを感じていたような気がします。製品のモニター要員に駆り出されたり、今はもうないロボット掃除機ココロボに覚えさせる言葉の音声サンプルの採取に参加したり。法務グループは事戦部の一部だったので、本部内の会議の設営で毎月ワイワイ椅子や机を運んでいたのも楽しい思い出です(古い集会室での冬の設営は寒かった・・)。

そんな日々を送っていたところ、当時の事戦部長から呼び出され、「小野さん、全く想像もつかないような異動の話があります」と言われ身構えたところ「経済産業省に出向する話があります。」「????!!!!!!」

経産省に快く送り出していただいた、八尾での最終日の記念写真。当時本部長だった沖津社長も☆

経産省には2014年から2016年の春までの2年弱を出向することになり、通商機構部 紛争対策室という部署でWTO(World Trade Organization:世界貿易機関)に関する業務を担当しました。WTOは簡単に言うと、自国の産業を守るために法律や関税で他国の製品を排除するような行為をやめさせるための会議や訴訟をする場所です。WTOの本部はスイスのジュネーブにあり、部会の会議や各国の担当者との個別面談に出席しました。少し前まで民間企業に居たのに、「私は日本の代表団です(I am a member of the Japanese delegation)」と挨拶する奇妙さを自分でも感じつつ、電気機器業界以外の様々な業界(自動車、化粧品、タイヤ、おもちゃ等)の方々の問題に寄り添うことのやりがいも感じました。ただ、他国の法律を撤廃させたり改正させることの難しさも痛感した日々でした

WTOの建物の前にて

WTOの出張メンバーと共に。たくさんの他国との面談や会議を一緒に乗り越えた良いチームでした。後ろに見えるのはレマン湖

2016年にシャープに戻った時に最初に担当したのはロボホンでした。シャープがロボットを作る?ユーザーのデータをクラウドに上げる?と、製品単体のビジネスしか知らなかった私にとってはあまり触れたことのないデータビジネスの世界でしたので、一から個人情報保護法を勉強する必要がありました。

2016年、青山に特設されたロボホンカフェに行ったとき

ロボホン以降、シャープの製品はほぼあらゆる製品がネットワークに接続していき、今や、世界中の製品やサービスがネットワークに繋がることが当たり前となっています。データを取り巻く世界の変化は速くかつダイナミックで、ついて行くのが大変ですが、グローバルで共通の課題を話し合える、いわば共通言語のような感じがしています。データビジネスに関わることをきっかけに、世界がより近くなったような気持ちがしていますので、これからもこの変化を楽しみながら仕事をしていきたいと思います。

2023年の夏に行かせてもらったカリフォルニア大学デービス校のサマープログラムにて(模擬裁判の様子)。
お隣はTOPPANのアメリカ法人駐在の方

同じくサマープログラムでカルフォルニア州都のサクラメントにある最高裁判所で裁判を傍聴した際の一枚

サマープログラムの帰りに訪問したSEC法務の皆さんと

ここまで読んでいただきありがとうございました。

次は同じ法務部の

法務部 コーポレート法務グループ
玉木敬子さん


にバトンをお渡ししたいと思います。
これまでの様々なシャープでのご経験が聞けるのを楽しみにしております!

(小野智美/法務部)

≪シャープ横断♪バトンリレー≫とは…?
みなさんの人脈を駆使しバトンのようにコラムを繋いでいくという、太古の昔からある数珠つなぎ企画!第34走者は法務部の小野さんでした。第35走者は、小野さんからバトンを託された玉木さんです。お楽しみに♪

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