米国・オーランドの空調機器展示会「The 2025 AHR Expo」に空気清浄機付きエアコン「Airest」を出展

今回の主幹であるSAS事業本部 空調事業部 海外商品企画部 参事 飯島さん
<展示会の概要と狙い>
当社は2025年2月10日から12日まで、米国・フロリダ州オーランドで開催された世界最大規模の空調機器の展示会「The 2025 AHR Expo」※に出展しました。出展社数1878社、出展国37か国、来場者は5万人を上回る盛況ぶりで、当社ブースにも120名の空調プロフェッショナルが訪れました。
量販店販売が主流の日本と違い、北米のエアコン市場は地域の施工店が家ごとに機器の選定や空調設計を行う「住宅設備市場」です。提案営業であるため、Airestや高性能のエアコンを使った「高付加価値提案」が可能です。そのような地域施工店へ空調機器を卸し、サービス支援を担う「地域代理店」の商流拡大のため、Smart Appliances and Solutions(以下SAS)事業本部の空調北米事業チームは毎年AHR Expoに出展し、北米市場でのプレゼンスを強化しています。
※「AHR Expo」は、1930年から米国で開催されている世界最大級の総合空調冷熱展で、このイベントでは空調、暖房、冷凍・冷蔵に関わる最新の製品や技術を世界中の企業や専門家が展示します。
<展示内容>
北米初の空気清浄認証を取得した「Airest」や、寒冷地向け性能規格「Energy Star Cold Climate」を全機種が満たす当社のラインアップに加え、日本では一般的なものの北米にはない「自動お掃除機能付きエアコン」のホコリ除去機能を実演し、当社技術の先進性をアピールしました。
<Airestの「リブランディング」>
今回特に力を入れたのが、Airestの「リブランディング」です。近年、空気清浄機能を謳うエアコンは数多く、「空気清浄機付きエアコン」との表現だけでは、新鮮に響きません。また、日本でのキャッチコピー「空気清浄機と呼べる唯一のエアコン」は、日本国内の空気清浄機規格を満たすことが背景にあり、その文言のまま北米で訴求することは困難です。Airestの海外デビュー戦略における大きな課題は、当社プラズマクラスターイオン技術も含めた、既存の空気清浄技術との「差異化」でした。
そこでまず取り組んだのが、現地フィルタ規格「MERV」の認証取得です。北米で主流のセントラル空調では、フィルタを数か月おきに交換するメンテナンスが一般層にも浸透しています。MERVの認知度が高いことに目を付け、フィルタメーカーの協力も得て「MERV 14」の規格取得に成功しました。一般的なエアコンフィルタはMERV 1~3程度、セントラル空調用フィルタでもMERV 5~ 11が主流であるため、Airestの高いフィルタ性能は際立ちました。
さらに、日本での「〇〇畳用」にあたる、空気清浄機能を数値化する現地規格「CADR」も取得し、Airestの先進性と高い空気清浄能力を定量化しました。



数値化の次は視覚化です。国内の企画部門および技術部門の協力を得て作成したカタログでは、6年間内部クリーニングなしで使用したAirestの内部と、適切な掃除を行わず埃やカビが目立つ2年使用後の通常エアコンの写真を並べました。この比較は一目瞭然で、非常に効果的なアピールとなりました。

<北米Airestへの反響>
この結果、惜しくも受賞は逃したものの、Airestはイノベーション賞のファイナリスト(最終候補)に選ばれ、一定の露出を果たしました。会期途中のステージプレゼンでは8件の質問に加え、制限時間を超えても手が上がり続けるほどの反響で、今回の「製品リブランディング」に自信を深める結果となりました。
Airestは、シャープが誇る唯一無二の製品です。今後は海外でも、空調ブランドのシャープとしての存在感を高めていってくれることを期待しています。



AHR Expo 2025では、多くの有望顧客を発掘し、巨大な成長市場である米州における空調事業拡大に踏み出しています。今後の米州事業の成長にご期待ください。

<参加者のコメント>
AHR Expoに初めて参加されたお二人から、コメントを頂きました。
<空調事業部長 三代さん>
AHR Expoは、空調設備機器や部品の展示に留まらず、システム開発・サービス用消耗材・教育部門など、空調事業に関わる様々な分野の商売人や技術者が5万人以上集まる、まさに業界の「祭り」のようなイベントです。このような国際展示会では、日本では知り得なかった技術や世界のトレンドに直接触れることができます。
例えば、銅からアルミへの熱交換器素材の転換や、環境負荷を低減する冷媒への移行といった技術的進化は、ガス漏れ探知センサーやこれまでとは異なる封入材など、新たなビジネスチャンスを生み出します。このような業界のダイナミズムを体感することは、自身のキャリアや視野を広げ、スキルを磨く絶好の機会となります。技術者の皆さんには、ぜひもっと積極的に海外出張に出かけてほしいと思います。
また今回、改めて北米市場の巨大さと成長性を実感しました。北米は当社空調事業の中でも最も伸びており、成長が期待される地域です。AIoTを通じたアフターサービスやユーザーの利便性向上、Airestに代表される空気浄化技術など、当社の特長技術を強く打ち出して、当社のプレゼンスを高めていきたいと考えています。
また北米のみならず、空調市場は世界中で伸びている成長産業です。皆さんと力を合わせ、のびしろの大きい海外市場の拡大に、意欲的に挑戦していきたいと思います。
<海外商品企画部NB推進プロジェクト 課長 上野さん>
海外の展示会に参加するのは、今回が初めてでした。日本での空調関係の展示会よりも規模が大きく、空調はまだまだ伸びる市場であることを肌で感じました。
この展示会の最大の利点は、他社の技術者に直接質問できることです。圧縮機・熱交換器・送風機といった空調の基幹部品の技術を学び、全く知らなかった部品サプライヤーを見つけることもできました。展示会を訪れる方々や出展ブースに立つ技術者の技術的関心の高さが印象的でした。
そんな中、当社のブースには多くの人が訪れていただけたことが嬉しかったです。この経験を通じて、オリジナル商品の開発意欲が高まりました。参加して良かったです。
<メイキング・オブ・AHR Expo>
今回の展示会も、物流手配から施工・撤収まで全て、委託なしの手作り展示です。資材のほとんどは昨年の展示会のものを再利用する、エコな展示を続けています。





飯島さんが手作りのラックにエアコンを施工していきます。モニターはもちろんSHARP!



現役の空調施工業者でもあるWoodwardさんが、カナダの販売会社SECLから助っ人に来てくれました。慣れた手つきと逞しい腕で、設置をどんどん進めていきます。遅い時間までかかりましたが、なんとか会期前日の日曜日に設営を終えました。
本来は二人そろって土曜日の作業開始予定でしたが、カナダの大雪と機器の不具合でWoodwardさんの乗った飛行機が飛ばず、早朝から夕方まで座席で待機することに。結局、別便を手配し直してオーランドに到着したのが土曜の深夜で、日本からの出張者も長旅だったため、二人とも疲労困憊でした。

会期終了後の撤収作業も二人で行い、その間に日本からの技術陣3名はカナダ東部・モントリオールの客先訪問と市場視察に向かいました。ところが、彼らも大雪の影響で振替便となり、アメリカ大陸を2回横断してようやく深夜にモントリオールに到着しました。
飛行機はトラブル続きで、時差も14時間あり、タフな出張でしたが、終わってみれば大変充実した展示会出張となりました。空調事業部では次回、更に若いメンバーにも参加してもらいたいと考えています。共に成長する機会を楽しみにしています!