「デザイン」は形のカッコ良さだけじゃない。デザイン賞は企業の価値を上げる?

シャープは2025年3月に8製品が、『2025年 iFデザイン賞』(主催:認定非営利団体 iFデザイン・ファウンデーション)を受賞しました。

今年行われた授賞式の金賞発表の様子

iFデザイン賞は、プロダクト、コミュニケーション、サービスデザインなど、複数のカテゴリーにわたって優れたデザインを表彰する、権威ある国際デザインコンペティションです。1953年に創設されたこの賞は、革新的でインパクトのあるプロジェクトを称えるもので、毎年、60カ国以上から11,000を超えるエントリーがあり、専門家からなる独立審査委員会によって、受賞作品が選ばれています。

iFデザイン賞はデザインの賞と呼ばれていますが、その受賞は、見た目の美しさだけではなく、機能性、ユーザーエクスペリエンス、環境に対するブランドのコミットメントを評価し、卓越した品質、革新性、持続可能性に対してブランドが認められた証でもあり、それらのシンボルとして世界的に高く評価されています。

このような名誉ある賞の意義をさらに理解するため、世界中の著名デザイナー131人で構成される専門家審査員の1人である総合デザインセンターのプーレン・フィリップさんに話を聞きました。

プーレン・フィリップさん
総合デザインセンター
グローバルコミュニケーショングループ所属

フランス系カナダ人のデザイナー、プーレン・フィリップさん(以下フィルさん)は、過去10年間にわたり、アドバンストデザインスタジオやグローバルスマートアプライアンスデザインスタジオでの仕事を通じて、数々の国際的なデザイン賞を受賞してきました。

最近では、グローバルコミュニケーションデザイングループのリーダーとして、シャープブランドのアイデンティティや価値を高めることに取り組んでいます。長年にわたり、さまざまなデザインスタジオにアドバイスを行い、その結果、多くのiFデザイン賞受賞に導いてきました。昨年にはiFデザイン賞の公式審査員に任命され、その専門知識と経験がさらに高く評価されています。

―iFデザイン賞はどのような審査でどのようなカテゴリーが審査されるのでしょうか。

審査員チームは、包括的な評価を保証するために、さまざまな分野の専門家で構成され、地域も多様です。応募作品は5つの基準で審査されます。

・アイデア(デザインの意図/着眼点)
・フォルム(完成度/美しさ)
・ファンクション(機能性/ユーザーメリット)
・差別化(革新性/ブランド差別化)
・サステナビリティ(社会的/環境的影響)

また、この賞は9つの分野にまたがっています

・プロダクト
・パッケージ
・コミュニケーション
・インテリア
・プロフェッショナルコンセプト
・サービスデザイン
・建築
・ユーザーエクスペリエンス(UX)
・ユーザーインターフェイス(UI)

さらに82のカテゴリーに分かれています。

金賞の最終審査をするために議論をしている様子

―ESGの観点もデザイン賞の評価に含まれているのですね?

iFデザイン賞は「デザイナーには世界をより良い場所にする責任がある 」と考えているため、サステナビリティはiFデザインの中心となっています。2025年からは、全82カテゴリーにおいて、審査基準の5分の1をサステナビリティが占めるようになりました。これをサポートするため、iFは審査プロセスに環境的・社会的インパクトを統合するサステナビリティ・ワーキンググループを設立しています。この新たな視点によってサステナビリティが評価の重要な部分を占めるようになり、応募者は持続可能なデザイン、包括性、エネルギー効率に関する訴求に取り組んでいます。

―これまで受賞してきたデザイン賞は、当社のビジネス戦略にどのように貢献できますか?

デザイン賞を受賞することは、創造性や革新性、持続可能性、品質のグローバルリーダーとしてのブランドアイデンティティを強化してくれます。さらに、長期的なブランディングツールとなり、市場での地位を高め、高品質へのこだわりを強調することで、競合他社との差別化を図ることができます。継続的な受賞は、ブランドロイヤリティと信頼を高め、創造性とイノベーションにおける当社のリーダーシップを示すものとなります。さらに、デザイン賞は当社が業界のリーダーであることを示し、リクルーティング活動にも効果的であり、かつ当社が競争力を維持しながら長期的な成長を促進する事にも役立ちます。

―フィルさんは今回、iFデザイン賞に審査員として参加して何を感じましたか

今日の市場は競争が激しく、企業は常に品質、創造性、革新性においてリーダーとしての地位を確立しようと努力しています。iFデザイン賞は、世界的なブランド認知を高める貴重な機会を提供しています。過去10年間、サムスン、ハイアール、LG、富士フイルム、ソニー、パナソニックといった競合他社が、優れたデザインへの取り組みを強化し、受賞によりブランド認知が向上していると考えています。今年の受賞を誇りに思う一方で、私たちの革新的なソリューションの幅を反映できていないとも考えています。私たちのブランドが複数のカテゴリーでリーダーとしての地位を確立し、グローバルな舞台でブランド価値をさらに高めていくためには、開拓すべき余地があると考えています。

審査グループのリーダーとしてディスカッションをしている様子

―フィルさん(デザインセンター)は今後どのような取り組みを行っていきたいですか?

現在、私たちはプロダクト部門のデザイン賞に焦点を当て、即戦力となる製品をプロモーションしています。しかし、先に述べたように、デザイン賞は単なる販促ツールではなく、ブランディングのためのものです。これらの賞の受賞は、私たちのブランドの卓越性、創造性、革新性、持続可能性を象徴するものであり、私たちの価値を高め、競合他社との差別化を図るものです。 長期的なメリットを最大化するためには、短期的なベネフィットから、より戦略的でブランド志向のアプローチが必要です。各賞へのエントリーをさらに主要カテゴリーに拡大することが重要だと考えています。たとえば、コミュニケーションデザインの分野では、コーポレートブランディング、テクノロジーブランディング、サービスブランディング、ウェブサイトをエントリーできます。プロフェッショナルコンセプトの分野では、サービスデザインコンセプトやユーザーエクスペリエンスコンセプト、特にAIソリューションやエネルギーソリューションのような新規分野に注力できると思います。

昨年トヨタが金賞を受賞した「産業用電動フォークリフト」
当社でもエントリー可能な分野です。

サービスデザインの分野では、ヘルスケア、ロジスティクス、インダストリーなどのカテゴリーが、私たちの統合ビジネスソリューションやAI主導のイノベーションを紹介するのに最適です。より戦略的なブランド志向のアプローチとして、さらに幅広いカテゴリーへのエントリーを進めることで、コーポレート、R&D、AI、B2B、B2Cといったさまざまな当社のブランド価値を高めることができます。

建築技術を審査しています

―最後に、フィルさんから社員のみなさんへメッセージをお願いします。

私たちデザインチームはシャープのブランド価値を高めるために、アプローチの拡充に注力するとともに、同じ目標に向かって取り組んでいるすべての部門を積極的にサポートし、シャープが創造性、革新性、卓越性において業界をリードする企業になることを目指しています。

これからも美しさや使いやすさだけでなく、利用体験を通じて人々を笑顔にするデザインの創出と、製品・サービス・ソリューションの提供に取り組んでまいります。

ありがとうございました。
今回は、シャープのデザインセンターの取り組みや思いについてご紹介しました。

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