オススメの一冊(37)近代美学入門
みなさんから募集した、とっておきの書籍を紹介します。ご自身の参考や、ご家族に紹介したくなる一冊とめぐり会えるかもしれません。
井奥陽子 著 (筑摩書房)
現代を生きる私たちは、芸術作品や自然、建物や人物など、様々なものに対して「美しい」と感じるのではないでしょうか。本書はそうした現代の「美」の概念の多くが17~19世紀のヨーロッパで成立した、実は歴史の浅い価値観であることを、様々な観点から紹介し、また美学の面白さを教えてくれる近代西洋美学の入門書です。タイトルにも入門とあるように、専門用語の使用は極力避けられ、非常に親しみやすい文体で書かれています。
例えば、古代や中世において「美」とは客観的なものであり、数学的に示すことができるものであったようで、この考え方は現代においても、「黄金比」という言葉にその痕跡が残っています。そんな近代以前において自然とは、美しいものではなく、むしろ醜いものであったそうです。私としては少し信じがたいですが、「風景」として自然を見るようになったのは近代になってからだそうです。
こうした現代において私たちが常識のように美しいと感じているものとは別のものを、昔の人は美しいと感じていたようです。ならば、未来の人もまた別のものを美しいと感じているかもしれないなと思うと、ワクワクしませんか。
本書を読み終わって、著者が美学と出会って味わった感動を精一杯私たちに伝えようとしてくれているのだと感じました。読む前は、美学に難しいイメージをもっていたのですが、美学ってこんなにも面白いモノなのかと感動しました。ぜひ、皆さんにもこの感動を味わっていただきたいと思い、本書を紹介させていただきました。


