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自然の法則を活かした技術の未来。átoaで体感する「ネイチャーテクノロジー」

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 シャープの製品には、独自の生物模倣技術「ネイチャーテクノロジー」を採用したものがたくさんあります。自然には、無駄や無理がありません。自然の摂理に学び、暮らしにも環境にもやさしく、快適なモノづくりを目指しています。
 「ネイチャーテクノロジー」は、2008年から研究開発を進め、これまで、エアコン室外機や扇風機、ドライヤー、洗濯機、ヘアブラシなど24品目の製品に搭載してきました。

※ 送風経路と吹き出し口の面積アップとの組み合わせによる。標準コース(洗濯~乾燥6㎏)で実施。 モモンガ構造採用モデルES-X12C/V12C:2.25m³/分、非採用モデルES-X11B:1.79m³/分。

■átoa×大阪ECO 学生発プロジェクト Nature LAB ~自然の法則を活かした未来のデザイン~

 AQUARIUM×ART átoa(神戸市中央区新港町、以下「átoa」)はアクアリウム(水族館)とアートが融合した新感覚の劇場型アクアリウムです。アートと生きものたちが共存する各ゾーンには、そのテーマを象徴するシンボリックな水槽が配置され、訪れた人々に癒しと感動を提供し、新たな文化施設としての体験価値を創造します。また、「átoa×〇〇」の化学反応を楽しむため、館内の各ゾーンを使った企画展を開催しています。

MIYABI 和と灯の間 和の空間に溶け込む水槽
PLANETS 奇跡の惑星 惑星をイメージした空間と水槽

 1月17日(金)から2月24日(月)まで、大阪ECO動物海洋専門学校(大阪市西区、以下「大阪ECO」)の産学連携教育に参画し、学生と連携した企画展「átoa×大阪ECO 学生発プロジェクト Nature LAB ~自然の法則を活かした未来のデザイン~」を開催中です。テーマは、生きものが持つ優れた性質を技術開発に活かす「バイオミミクリー(生物模倣)」です。

  「バイオミミクリー」とは、地球上の環境に適応し、さまざまな能力を身に着けてきた生きものたちの形態、機能、能力などを模倣し、新技術の開発やモノづくりに活かそうという考え方を指します。実際に、ハスの葉の撥水性を再現した食品のフタや、壁や天井に張り付くヤモリの手足の構造を参考にしたテープ、カタツムリの殻を模倣した汚れの付きにくいタイルなど、「バイオミミクリー」によって生み出された商品や技術が多数存在しています。シャープの「ネイチャーテクノロジー」も「バイオミミクリー」のひとつです。

本企画展の看板は色素を使わず微細構造が光に干渉して発色して見える「構造色」の印刷技術
見る角度によって色合いや強さが異なります

「ネイチャーテクノロジー」の展示

Nature LAB ~自然の法則を活かした未来のデザイン~

 本企画展では、「バイオミミクリー」による商品や技術開発に携わった14の企業・団体の協力のもと、商品とモデルになった生きものの性質について展示紹介しています。

 シャープからは、「はねやすめ」をはじめ、エアコン室外機、扇風機、洗濯機、ヘアブラシ、掃除機に搭載している「ネイチャーテクノロジー」計8点を展示しています。以下に、それぞれが模倣した生きものとその効果についてご紹介します。

 自然の風を具現化したヒーリングファン「はねやすめ」は、フクロウの柔軟な大きな翼の「形態」と、ゆっくりと羽ばたく「動き」を模倣しています。羽根の平面形状、しなり、間欠的はばたきをお手本にして、現在の回転ファンとは異なるエコな送風を実現しました。「はねやすめ」は第5回「蔦屋家電+ 大賞」で入賞しています。

第5回「蔦屋家電+ 大賞」
ネイチャーテクノロジー・自然の風を具現化したヒーリングファン「はねやすめ」

 エアコン室外機のプロペラファンにはさまざまな鳥の翼の形状を応用しています。アホウドリの翼を応用することで、羽根の円周部にできる渦を小さくすることに成功しました。羽根の後端部はイヌワシの翼のように風をつかんでコントロールするので、排出される渦が小さく、次の羽根への衝突を最小限に抑えています。また、アマツバメの翼形状(厚み)を応用することで静圧(空気を吸い込む力)が向上し、室外機のまわりに雪が積もって空気を取り込みにくいときも、その抵抗に打ち勝って安定して吸い込めるようになりました。

エアコン(室外機) | ネイチャーテクノロジー

 アサギマダラ蝶の羽根を応用した扇風機の羽根は、羽根の“くびれ”と羽ばたく時の“うねり”を応用した独特の形状です。7枚羽根を採用し、アサギマダラ蝶の羽根特有の“中央のくびれ”を採用することで、回り始めた羽根が二重の軌跡を描き、前で7枚・後ろで7枚の合計14枚羽根相当のなめらかな風を生み出します。これにより、長時間風に当たっていても疲れが少なく手足の冷え過ぎも抑えられます。

リビングファン | ネイチャーテクノロジー

 タテ型洗濯乾燥機用のパルセーターは、表面にはイルカの表皮のしわを、裏面に尾びれを応用した形状を採用しています。第二世代ではイルカの尾びれ形状が2カ所から4カ所に増え、かき混ぜる力が強化されました。第三世代は、尾びれを応用した流線形の傾斜面が強い水流を作り、衣類の上下移動を促進します。イルカの尾びれ形状と、その尾びれを上下に蹴りだすリズム(ドルフィンキックパターン)を活用し、左右回転と上下の運動を組み合わせることで、衣類の入れ替わりを促し、洗浄効率を向上させ、洗浄時間を短縮しました。

タテ型洗濯機 | ネイチャーテクノロジー

 マンタのエラ構造を応用した洗濯乾燥機の排水フィルター「するポイフィルター」は、互いに重なる翼形状で、従来の格子形状とは全く異なるデザインです。マンタのエラ部分には鰓し(さいし)と呼ばれるエラの付属器官があり、この形状を応用することで、洗濯の排水の際、ゴミがフィルターに絡まりません。糸くずの引っかかる向きが揃っているので、振るだけでも取りやすく、残ったゴミは指でなぞればスルッと取れます。

ドラム式洗濯乾燥機 | ネイチャーテクノロジー

 イカの遊泳方法から着想した当社独自の「イカブラシ」は、ヒレを巧みに使って前後自在に泳ぐイカのヒレ形状を応用しています。波形状のイカブラシにより靴が1カ所に集まるのを防ぎ、ブラシが靴に満遍なく接触することで、靴全体をしっかりと洗浄できます。

コインランドリー向け靴用洗濯乾燥機

 ラッコの毛づくろいを応用したプラズマクラスターヘアブラシは、形状や太さ、長さの異なる3種類のピンを採用し、どの方向からでも髪に作用するように配置しています。ラッコが小さな手で効率よく毛づくろいをする秘訣は、出し入れできる爪と手のひらのシワにあります。爪で毛を整えながら隙間を作り、手のひらでもみ込むことによって毛の間に空気を送り込みます。この仕組みをヘアブラシに応用し、絡まりそうな部分に突き刺し、太い根元で隙間を広げ、髪をほぐします。波配列により毛束が細かく分割され、ブラシと毛束が効率よく接触し、ブラシ通りを軽くしました。

ヘアブラシ | ネイチャーテクノロジー

 ゴミ圧縮ブレードの表面に、ネコ科動物の舌の構造を応用したトゲ状突起を設けています。この突起が髪の毛をブラシでとかすように吸い込んだゴミをならすため、ゴミに含まれている空気が分離されて体積が減少します。また、突起は圧縮方向に回転している時は引っかからず、戻ろうとする時にだけ引っかかるので、逆戻りも抑えられています。

サイクロン掃除機 | ネイチャーテクノロジー

■átoaの熱意を直撃!職員が語るバイオミミクリーの未来

 今回の企画展の目的や、見どころなどをátoa職員の方2名に取材しました。農学博士でウミガメを研究している施設課長の石原さんと、人間・環境学博士で熱帯地方のアリを研究していた営業課の半田さんです。

左から、笑顔が素敵な石原さんと半田さん

――どうして生物を研究しようと思ったのですか?――

 野生の動物に魅力を感じ、大学時代にウミガメを探すサークルを立ち上げて活動していたところ、いつの間にか大学院でウミガメの研究をすることになりました。生きものの生息環境を訪ねること自体が刺激的であり、生態や行動には不思議がいっぱいです。周囲との関係性について思いを馳せると何かしらの気づきがあると感じています。

 小さいころから生きものが好きで、とくに小さい生きものに魅力を感じていました。カナヘビやヒキガエルを飼っていた経験もあります。学生時代は進化や生態学に興味を持ち、アリについて研究しており、熱帯地域に行って調査するほど好きだったため、アリについてなら一日中話せます。

――「バイオミミクリー」の観点で個人的に好きな動物は?――

 ガラスのように滑らかな表面でも移動することができるヤモリのてのひらの吸着性の構造が特に好きです。また今回、シャープのマンタのエラ構造を応用し、排水フィルターのお手入れを楽にする、洗濯乾燥機用糸くずフィルターを知りました。これまで、マンタのエラは水を取り込み餌を漉しとるだけだと思っていましたが、実は、水流を上手にコントロールしていることを知り、楽しい驚きがありました。自宅でシャープのドラム式洗濯機を使っていることもあり、マンタのエラに愛着が湧きました。

 両生爬虫類が好きだというのもありますが、私もヤモリのてのひらの構造には特に感心しています。目に見えない細かい構造で吸着性を実現しているのは素晴らしいと思います。また、「ネイチャ―テクノロジー」搭載製品では、アサギマダラ蝶の羽根を応用した扇風機の羽根に興味を持ちました。1枚の羽根で2枚の羽根を表現する構造に感銘を受けました。

――展示の見せ方で工夫した点、苦労した点は何ですか?――

 átoaのコンセプトである「空間への没入感」を維持しつつ、企画展であることを伝える必要がありました。技術やそのもとになった生きものの素晴らしさ・面白さをどう伝えるかを考え、世界観を作るのが最も苦労した点です。

企画展のシャープの展示

――生物の特徴を応用している「ネイチャーテクノロジー」についてどう思いますか?――

 「ネイチャーテクノロジー」の取り組みには大いに感銘を受けました。搭載製品数や模倣した生きものは多岐にわたっており、実用化が進んでいること、また、それが当たり前のものとして製品に組み込まれていることに感動しました。今後、さらに対象製品や生きものに拡がりが出てくるのを楽しみにしています。

――シャープの「ネイチャーテクノロジー」搭載製品で気に入った、驚いた、納得したものはありますか?――

 一番驚いたのは、イヌワシ・アマツバメ・アホウドリの翼を同時に採用したエアコンの室外機のプロベラファンです。「バイオミミクリー」は1つの製品に1つの生きものという固定観念をもっていたことに気づかされました。見事に3種の特性が融合されており、素晴らしい製品だと感じました。外から見えにくい部品でありながら、その実直さが素敵です。

 先ほどお話しした、アサギマダラの羽根を応用した扇風機には驚きましたし、はねやすめの発想も面白いと感じました。実用的な製品への搭載になりがちなところ、ふくろうの動きを再現したところに面白さを感じました。今回の企画展に来場したお客様からも「こんなのを家に置きたいよね!」と いう声が聞こえてきており、製品の雰囲気はとても重要だと思います。

――ほかにどんな応用製品ができそうですか?――

 ナマコのキャッチ結合組織(硬さの変わる結合組織)は、利用できそうだと考えています。例えば掃除機に採用し、広いところを掃除する際には固くなり、狭いところでは柔らかくなってフレキシブルに動くノズルとか。また、カメの甲羅は2重構造で、つなぎ目がずれているため、外からの衝撃を分散しています。この構造も製品の軽量化に役立ちそうです。水から出た動物が体を振って水気を飛ばす動きを応用した製品なども面白そうです。それこそ、átoa の空間にもマッチする、見せる家電、リビングに置いても自然に溶け込む家電が「ネイチャーテクノロジー」で実現できるといいなと思います。

 生きものの形態だけでなく、「はねやすめ」のように動きを模倣したものはおもしろいと思います。また、生きものと生きものの関係性を活かした製品も考えられそうです。例えば、ごみを見つけて集める掃除機などが挙げられます。また、átoaでは五感を大切にしています。「ネイチャーテクノロジー」で生きものの手触りや香りなどを活かした製品も実現されたらいいなと思います。

átoaのアートの一つ「香」
生き物の後ろ姿、かわいいおしりを眺めながら、普段はかげない匂いを楽しめます

――展示を通じて来場者に伝えたいメッセージを教えてください――

 看板にも記載している「自然が磨き上げた究極の機能美」という文言があるのですが、ぜひ、実感してもらえると大変うれしく思います。

 展示製品の技術を通して、生きものの素晴らしさを伝えたいです。小さい生きものにもたくさんの魅力が隠れています。また、長年培ってきた生きものの生態や知恵を人間が参考にしている一方で、環境破壊などにより生物の多様性が脅かされているのも事実です。今回の企画展を通じて、生きものに感謝する気持ちを改めて持っていただき、生物多様性の重要さに気づくきっかけになればと思っています。

――「バイオミミクリー」の未来に期待することは?――

 「バイオミミクリー」を通して、生きものが進化の中で磨き上げてきた機能美に目を向ける人が増えていくことを願っています。また、「確かにその能力がないとそんなことできないよね!しかしすごいな!」と気づかせてもらえる「バイオミミクリー」がたくさん登場すれば、単純に楽しいなと思います。

 製品の開発に時間をかけるなかで、生きもののふとした様子に触れ、何かをひらめき、一気に開発が進むこともあると思います。生きものの素晴らしさから多くのものが生まれたら楽しそうです。生きものの機能美や効率的な動きが省エネに繋がることもあります。私たち人間も自然の一部ですので、できるだけ負担をかけないように考える際に参考となる先生が生きものだというのはとても素敵だと感じます。これからも、「バイオミミクリー」を取り入れたものが登場することを期待しています。

――ありがとうございました。――

 今回の「Nature LAB」企画展を通じて、シャープの「ネイチャーテクノロジー」が実現する技術の進化と、自然から学ぶことの意義を再認識しました。私たちの身の回りにある多くの製品に、何万年もかけた生きものの進化からヒントを得ているものがあります。

 取材を通じて、átoaの職員の方々からも自然との共生を意識した技術への熱意や期待が伝わってきました。彼らの視点から、「ネイチャーテクノロジー」が私たちの生活にどのように関わっているのか、理解できたのではないでしょうか。 

 この展示を通じて多くの方々に自然の知恵を活かした製品の魅力を伝えたいと考えています。ぜひ、みなさんもátoaを訪れて、このユニークな企画展を体感してみてください。

餌を探して、部屋の中を自由に散歩するアルダブラゾウガメ

■企画概要
 企画展名:átoa×大阪ECO 学生発プロジェクト
      Nature LAB ~自然の法則を活かした未来のデザイン~
 開催期間:1月17日(金)~2月24日(月・祝)
 開催場所:兵庫県神戸市中央区新港町7番2号 神戸ポートミュージアムátoa 3階FOYER
 *átoa入場料が必要です。詳しくはホームページをご確認ください。
 https://atoa-kobe.jp/

日本最大級の球体水槽「AQUA TERRA」
átoaの入口

<関連サイト>
ネイチャーテクノロジー

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