このところ街中を歩いていると、大きな駅やショッピングセンターなどの商業施設で、画面内につなぎ目のない巨大なディスプレイが使われているのをよく見かけるようになりました。
初めて間近で見た時には、とても明るくきれいな映像でハッとしました。もっと近づいてよく見ると、赤、緑、青に光る小さな点がびっしり並んで光っていて、映像の動きに合わせて次々に色が変化しており、LEDディスプレイだとわかりました。
当社の納入事例でも、昨年JR川崎駅において大型LEDディスプレイが採用されるなど、皆さんの身近な生活環境にも徐々に浸透してきているかと思います。

左(南)側:(縦)約1.7m×(横)約24m、
右(北)側:(縦)約1.7m×(横)約12m
この当社のLEDディスプレイについて、商品企画の袖岡、開発部門の若杉、橘内に話を聞きました。

LEDディスプレイについて教えてください。
(袖岡)LEDディスプレイは、小さなLED(発光ダイオード)を搭載した表示器です。ディスプレイ表面を覆うLEDが発光することで、表示内容を映し出します。
液晶ディスプレイなどの一般的なディスプレイでは、ディスプレイを囲う「枠」のことをベゼルといいますが、LEDディスプレイはこのベゼルが無いため、複数枚を組み合わせて1つの大画面を構成した時に、ディスプレイ間のつなぎ目がなく、自然な表示が可能です。

LEDディスプレイはモジュールと呼ばれる部品を、通常、複数枚組み合わせて大画面表示を実現します。また、L字型に組み合わせるなどして自由度の高い表示も実現できます。
さらに、このモジュールはピクセルカードと呼ばれる部品から構成されています。


ピクセルカードとは?
(袖岡)ピクセルカードはLEDが平面基板にびっしりと実装されたデバイスです。ピクセルカードでは、LEDのパッケージがとなり合う間隔をドットピッチと呼び、「1.2mmピッチのピクセルカード」などと呼びます。

(縦)約17㎝×(横)約15㎝サイズ
●サイズは製品によって異なるため、目安です
現在商品化されている高精細LEDディスプレイ用のピクセルカードは、大きく分けると、SMD(Surface Mount Device:表面実装型)とCOB(Chip On Board:チップオンボード型)の2種類の方式があります。
SMDは1ドットに相当するRGB(Red Green Blue)のLEDを1パッケージ化して、基板に実装する方式で、1ドット毎に交換修理が出来るメリットがあります。横から見ると、凸凹した表面になっています。
COBはLEDを基板に実装したあと、表面に樹脂をコーティングする方式で、物理的衝撃などに対してLEDを守る効果があり、人通りの多い商業施設などでも採用されています。一般的にはCOBはSMDより発光効率が良く、低消費電力を実現します。樹脂でコーティングするので横から見ると表面が平らになっています。

LEDディスプレイの市況はいかがでしょうか?
(袖岡)LEDディスプレイの市場は拡大してきており、2018年から、本格的に事業展開しています。
近年、性能やコストパフォーマンスの向上などにより、国内外で導入が進んでいるところで、その波に乗って事業を拡大していきたいと考えています。
LEDディスプレイは屋外向けと屋内向けに大きく分かれます。屋外向けはビルの壁面などで大型の商品が多く、屋内向けは駅構内やショッピングセンターなどの商業施設や、企業の施設を管理するコントロールルームなどでの採用が広がっています。当社は、屋内向けの高精細の分野に特に注力しています。
どのような施設に導入されていますか?
(袖岡)最近の導入事例としては、JR川崎駅北口通路やJR東京駅八重洲口などがあります。
JR川崎駅北口通路の事例は、「THE KAWASAKI VISION(ザ カワサキ ビジョン)」という名称で、公募で選ばれた株式会社DeNA川崎ブレイブサンダースさまが運営しています。
通路の壁面を有効活用し、川崎市の玄関口として魅力とにぎわいのある広域拠点の形成に向けた広告事業を行うため、2024年9月1日より、プロバスケットボールクラブである川崎ブレイブサンダースの情報や川崎市の公共情報など様々な映像が放映されています。

東京駅・八重洲北口コンコースの事例は、東京ステーション開発株式会社さまに247V型と180V型相当の2面の大画面LEDディスプレイを活用したデジタルサイネージシステムとして導入していただきました。2023年10月から運用されています。本システムは10年間の保守サービスも提供させていただき、安定したシステム運用の支援もさせていただいています。

(左:180V型、右:247V型 相当)
●画像はハメコミ合成です。実際の表示とは異なります。
商品化にはどんな苦労がありましたか?

(若杉)製品開発を担当している若杉です。LEDディスプレイは、一般的なテレビなどとは異なり、製品を出荷して電源を入れればすぐに使用できる物ではありません。導入事例の写真からも分かるように、それぞれの現場で状況が異なるため、都度必要な設置用部材(背面を固定するフレームなどの金具類)の調達や設置現場での調整が必要です。
具体的には、工場で一度組み立てて画質などの表示品質を確認してから出荷し、現場で再現できるようにして品質を維持しています。
日々、現場の苦労を出来るだけ減らすよう、設置しやすくなる設計を心掛けています。

(左中央)つなぎ目が揃っておらず視認できてしまう。
(右中央)つなぎ目が揃っておりほとんど見えない。
ディスプレイですから「画質などの表示品質」も重要ですよね?
(橘内)はい。大きなディスプレイで表示品質を一定にするため、LEDレベルからピクセルカードやモジュール単位での表示色のキャリブレーション(調整)までこだわっています。時には数十メートルにもなる巨大なディスプレイであり、色ムラがあると目立ってしまうので、調整はとても重要です。
充分な表示性能を確保するためには、ソフト的なキャリブレーション(調整)だけでは不十分で、LEDの輝度のバラツキが少ない素子を入手するため、部材メーカーの選定にもこだわり、関係会社とのコミュニケーションなども密に行っています。
また、近年、環境負荷軽減のためにも消費電力の削減が重要になっていますので、LEDをパッケージ化する時の樹脂素材の選定や樹脂の厚みの調整などにも注力し、全体バランスにこだわった製品開発を心掛けています。

当社のLEDディスプレイをご覧になったことがない方は、ぜひ、一度、私たちのこだわりのLEDディスプレイをご覧になっていただきたいと思います。きっとご満足いただけると思います。
―――ありがとうございました。
当社のLEDディスプレイは川崎市のJR川崎駅北口通路、東京駅・八重洲北口コンコースのほか、大阪のなんばCITYでもご覧いただくことができます。
また2024年11月11日にリニューアルオープンした当社の法人のお客様向けショールームでも実物をご覧いただくことができます。ぜひ、ご検討の方は一度お越しください。
(広報C)

法人のお客様向けショールーム(SHARP Interactive Showroom)
製品情報
ニュースリリース
東京駅・八重洲北口コンコースにデジタルサイネージシステムを設置
その他の導入事例
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