シャープが考える次世代自動車の運転席とは?‐広々としたリラックス空間を実現する「次世代車載コックピットソリューション」(1/2)
2025年4月24日

「次世代車載コックピットソリューション(コンセプトモデル)」
私はドライブが好きで、観光地やイベントなどによく出かけます。しかし、行く時は元気なので運転が楽しいのですが、疲れ果てた帰りの行程は、車内空間が狭いスポーツタイプの車に乗っていたこともあり、運転するのが少しつらく、楽に家までたどり着けないかとずっと感じていました。最近は自動運転が進みつつあり、運転の負担は減りそうですが、これから未来の自動車の運転席はどのような姿になるのでしょうか?
当社は昨年(2024年)9月、独自技術に裏付けられたシャープの“Next Innovation”を体感できる、大規模技術展示イベント「SHARP Tech-Day’24 “Innovation Showcase”」(以下、「Tech-Day」)を開催し、「次世代車載コックピットソリューション(コンセプトモデル)」を展示。シャープが得意とするディスプレイおよびその関連技術をベースに、未来の車のフロントシート(運転席・助手席)の姿を提案しました。
他にも「Tech-Day」では、後部座席の空間を広く確保したシャープのEV(電気自動車)のコンセプトモデル「LDK+」の展示も行い、空間の快適性を重視したシャープの次世代自動車に向けた両提案は多くの注目を集めました。

以前、本ブログでは、車載用ディスプレイとして、あたかも物理的なボタンがあるかのようなクリック感で操作ができる「クリックディスプレイ(Click Display)」を紹介しましたが、「次世代車載コックピットソリューション」は、それに加え、ドライバーの前方視野に情報を表示する「大画面ヘッドアップディスプレイ(Panorama Head Up Display)」やインテリアに溶け込む「テクスチャーディスプレイ(Texture Display)」などが用いられています。
本ブログでは「次世代車載コックピットソリューション」と用いられているディスプレイについて2回に分けて紹介します。今回は、「次世代車載コックピットソリューション」の概要や特長、開発のきっかけなどを、企画担当 上野、デザイン担当 木村に話を聞きました。


― 「次世代車載コックピットソリューション」開発のきっかけは?

(上野)自動車には、ダッシュボード※1にスピードメーターなど走行情報を表示するパネル類、センターコンソール※2にエアコン、オーディオ、カーナビの操作を担う表示パネルなど、多くのディスプレイが使われています。シャープは、車載用に活用可能な、先進のディスプレイおよび関連技術を持っており、個別に自動車メーカーへ提案していましたが、個々の展示の評判は良いものの、メーカー側からは将来の自動車にどう採用できるのか、どのように車内インテリアに融合していくのかがイメージしづらかったようです。そこで、個々の技術を組み合わせ、フロントシート部分全体でのソリューションとして提案し、どんなことができるのかイメージしてもらいたいと考えました。

※1 ダッシュボードとは、フロントガラスから下の部分のこと。運転席・助手席の前に広がる計器盤などパネル全体を「インパネ(インストルメントパネル)」といいますが、ダッシュボードとインパネは同義語。
※2 運転席と助手席の間にある、スイッチやシフトレバーなどが取り付けられるスペースのこと。
― どれぐらい先をイメージしたのですか? 開発のコンセプトも教えてください。

(上野)さまざまな自動車メーカーが自動運転に向け開発を進めていますが、私たちは3~5年後の半自動運転をイメージし、ドライバーの運転サポートをしつつ、自動運転時にはくつろげる空間も提供できるよう、複数の技術を融合した提案を行いました。

(木村)運転の自動化が進み、自動車のAIが運転をサポートするようになれば、ドライバーの操作も減り、あまり運転に集中する必要がないため、ゆったり座って移動できます。それならば、運転席や助手席においても、自宅のリビングのようにリラックスできる空間が求められるのではないかと考え、「インテリアと一体化した先進インターフェースが実現するリラックス空間」をコンセプトにしました。
― 「次世代車載コックピットソリューション」の概要を紹介してください。

(上野)「次世代車載コックピットソリューション」は、AIを活用しながら、シャープが持つ固有のディスプレイ関連技術を融合させたシーンをイメージして作成したものです。具体的には以下の3つのディスプレイで構成されており、時速や燃費など車両の走行情報やカーナビ、エアコン、オーディオなどの情報・映像、さらに、例えば目的地近辺のグルメや駐車場など、AIと連動した情報などを表示します。

① 「大画面ヘッドアップディスプレイ(Panorama Head Up Display)」
フロントガラス下部に投影し、ドライバーの視野内に情報・映像を表示するディスプレイです。ドライバーが視線をあまり動かさずに済むため、安全性が高まります。ダッシュボードにあったメーター類を大画面ヘッドアップディスプレイに表示させることに加え、フロントガラスの奥に映像が見えるように設計していますので、ダッシュボード面を思い切って奥に広げることが可能になり、圧迫感がなく広々とした空間を実現します。

②「テクスチャーディスプレイ(Texture Display)」
車内のインテリアデザインと一体化したディスプレイです。ディスプレイの存在感を消しつつ、必要な時だけAIが判断し情報・映像を表示する使い方が可能になります。ダッシュボードとセンターコンソールに使用しており、おしゃれでスマートな空間を実現し、リビングにいるようにリラックスすることが可能です。

なかでも、センターコンソールに採用した「テクスチャーディスプレイ」は、「クリックディスプレイ」を組み合わせた、最先端のディスプレイです。
③「クリックディスプレイ(Click Display)」
「触れる」と「押す」を判別するとともに、ハプティクス技術によりあたかも物理的なボタンがあるかのようなクリック感で操作ができるディスプレイです。ブラインドタッチが可能なため、安全な操作に繋がります。上述のセンターコンソールの「テクスチャーディスプレイ」に用いられています。

*「クリックディスプレイ」は、以前公開したブログに詳細を紹介していますのでご覧ください。 ⇒ 近未来のデバイス「クリックディスプレイ」①/②

(木村)操作系統は、リラックス空間を実現することで、ダッシュボードのディスプレイへのタッチ操作がしにくくなるデメリットもあることから、手元(コンソール)に集約しました。あらゆるデバイス・装置をコンソールのディスプレイ(「テクスチャーディスプレイ」+「クリックディスプレイ」)で操作することが可能です。

― 確かに洗練された空間ですね。UI(ユーザーインターフェイス)も含めデザイン面でのこだわりや苦労したことを教えてください。

(木村)自動運転時に使用するイメージを考えた時、例えば、テクスチャーディスプレイは車内の内装に合わせて普段非表示ですが、車の位置情報と照らし合わせながら、目的地までどのくらいとか、現在地や目的地の近くに何があるのか、到着時間や目的地の気温など、AI側がドライバーや助手席に対していろいろなおすすめ表示や問いかけをするディスプレイとして使えることを想定し、作成しました。
形状については、大画面ヘッドアップディスプレイはどういう位置に配置したら最適なのか、位置・角度など何度も試行錯誤しながら設計し、寸法を決めています。
また、クリックディスプレイは、使用感と連動感をどう上手く見せられるかにこだわりました。自動運転に近づいた世界観だと、表示するコンテンツは何が良いのかなども、かなり検討を重ねました。
― 最後に「Tech-Day」に出展しての感想と今後の想いを聞かせてください。

(木村)自動運転での世界観は表現できたと自負しています。家電メーカーのシャープならではの視点で、リラックス空間という提案ができたのではないでしょうか。できれば、展示にとどまらず、実際の自動車のコックピットに採用して欲しいと思います。

(上野)「Tech-Day」に出展したことでさまざまな人の声を聞けたのは良かったです。そうした声をこれからのディスプレイ事業に反映し、まだ開発中のそれぞれの技術を製品化できるよう、進めていきたいと思います。
<次回に続く>
今回は「次世代車載コックピットソリューション」の概要を紹介しました。次回は、類を見ないコンセプトの「テクスチャーディスプレイ(Texture Display)」を中心に、ディスプレイそれぞれの内容をもう少し詳しく紹介します。ぜひご期待ください。
(広報H)
<関連サイト>
■ニュースリリース:「SHARP Tech-Day’24 “Innovation Showcase”」を開催
■SHARP Blog
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