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製品・サービスの「使いやすさ」を支えるシャープの「ユーザビリティエンジニア研修」

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こんにちは。広報のUです。
みなさん、ユーザビリティという言葉をご存じですか?
ユーザビリティは「ユーザーにとってどれだけ使いやすいかの度合い」を意味しますが、一言で「使いやすさ」といっても見てすぐ使い方がわかるか、操作はしやすいかなど、さまざまな要素があります。シャープはユーザビリティを、性能や耐久性、信頼性などを含む品質要素のひとつとして大切にしており、日々製品開発に活かしています。


※シャープのユーザビリティについて、詳しくは「シャープの「使い勝手」にこだわった製品開発への思い」をご紹介した2022年のシャープブログをご覧ください。

このユーザビリティという考え方を社内に浸透させるべく、「ユーザビリティエンジニア研修」を実施しています。本研修は初級、中級、上級の3段階にわかれており、基礎から実践へと進んでいきます。今回は、開発や企画、デザインを担当する社員に向けて開催された「中級ユーザビリティエンジニア研修」の様子をご紹介します。この研修では、「ユーザビリティテスト」の手法について、実習やグループワークを通じて学びます。

研修にはシャープの製品開発に携わる技術者や研究者、デザイナーなど16名が参加しました。

オリエンテーションで研修の流れなどの説明を受けたあと、さっそくユーザビリティテストを体験する実習に移ります。


ユーザビリティテスト体験

ユーザビリティテストとは、実際にユーザー(テストユーザー)が製品を操作する様子を開発者が観察し、問題点を定性的に抽出する手法です。当社にはこのテストを実施するためのユーザビリティラボという施設があります。ラボはインタビュールームと観察室にわかれており、インタビュールームでテストユーザーが製品をテストする様子を、観察室で確認します。

インタビュールーム(左)と観察室
インタビュールームに設置した4つのカメラの映像を、観察室で確認。

今回の研修でテストの題材としたのは「LEDシーリングライト」のリモコンです。受講者はテストユーザーに試してもらうタスクを指示する進行係や、観察された状況を記録する記録係などに分かれてユーザビリティテストを体験します。

受講者(進行係)がテストユーザーにやっていただくことについて指示を出します。
取扱説明書を読まずに、「照明をつける」、「色味を調整する」などのタスクが完了できるか観察し、
記録します。

テストユーザーには操作を試してもらうだけでなく、見た目の「好ましさ」や「簡単に使用できそうか」など第一印象についてもたずねます。またその様子は、天井や床に設置した4つのカメラで観察し、手元や目線の動き、どのように操作するのか、迷っているところはないかなどを注意深くチェックします。後から「どうしてその操作に至ったのか」という理由まで詳しく尋ねていきます。

タスクに従って操作するテストユーザー(左)とテストユーザーの目線や手の動きを観察する受講者

グループワークと結果報告会

実習の後は、4名1組のグループに分かれて、テストユーザーのタスクに対する達成度を確認し、観察した結果を話し合います。テストユーザーが取った行動や、不便に感じていた点を確認し、さらにどのように改良するべきか意見を出し合い、グループごとにまとめて発表しました。

普段はまったく異なった仕事をしている社員同士
それぞれの視点から意見を出し合います

今回の実習に使用したLED照明のリモコンは15年前の製品であり、すでに改良された後継機が存在します。各グループの考えた改善点と、実際に製造された後継機の共通点や違いについても確認し、その後筆記試験を行い、研修を終えました。


研修を終えた社員に感想を聞きました。それぞれに学びがあったようです。

「ひとつの製品に対して色々な見方があり、人によって感じ方が大きく異なることがわかり、それらを意識して開発したいと感じました」

「(開発を担当している)画面内で完結するスマートフォンとは異なり、LED照明のリモコンのテストでは、ユーザーの目線がボタンや照明本体などさまざまな場所に移動しており、とても興味深かったです」

「テストユーザーがタスクに応じた操作をスムーズにできなかったり、開発者の意図とは異なる操作をしたりする様子を見ると、私たち開発者がただ想定するだけでは限界があると思いました。お客さまが実際にどう行動して、どういった考え方をされているのか、観察することはとても大切で、今後の開発に活かしたいと感じました」


最後に、今回「ユーザビリティエンジニア研修」を進めている品質推進部の佃・宮田・土井に、シャープが考えるユーザビリティの重要性や研修を行う意味について聞きました。

左から佃・宮田・土井

―ユーザビリティエンジニア研修を行う必要性について教えてください。

製品やサービスの開発には、技術的・時間的・コスト面など、さまざまな制約がつきものです。しかし、開発に関わる一人ひとりが「お客様目線でのモノづくり」を意識することで、たとえ小さな配慮であっても、それがより良い製品・サービスへとつながります。
本研修は、そうしたマインド醸成と基盤となる知識向上を目的とした、ユーザビリティ向上に欠かせない重要なプログラムです。

―シャープの品質として大切にしていることを教えてください。

シャープでは、お客様の信頼獲得と満足度向上を目指し、お客様のニーズやご要望に真摯に向き合いながら、安全性・品質・信頼性に配慮した、より良い製品・サービスの提供に継続的に取り組んでいます。
ユーザビリティについても、品質の重要な要素のひとつと捉えており、「使ってみたい」「使いやすい」「長く使い続けたい」と感じていただける製品・サービスの創出を通じて、シャープファンを増やしていくことを目指しています。

―実際に、ユーザビリティテストを行った結果、改良された・開発された製品があれば教えてください。

ユーザビリティテストは、開発の上流段階におけるプロトタイプや試作機、さらには発売後の商品やWebサイトなど、さまざまなフェーズで活用され、製品・サービスの改善につながっています。

たとえば2025年3月発売の除湿機<CV-T190>の開発では、排水タンクの使い勝手向上を目的に、開発上流で従来機種と複数の改善案を盛り込んだプロトタイプを比較評価し、「評価→改善」を繰り返しました。さらに、商品化された機種でも効果検証のための評価を実施した結果、「取り出し→持ち運び→水を捨てる→取り付け」の一連の動作において高評価となり、時短効果も確認されました。この排水タンクは【感動タンク®】と名付けられました。

除湿機(CV-T190)に搭載
タンク上部のハンドルを引き出すことで簡単に取り出せる。
また、タンクを傾けると水圧でふたが開く構造なので、手軽に排水が可能。

―ユーザビリティの大切さについて教えてください。

使いやすさの向上は、ユーザーの効率アップやストレスの軽減につながるだけでなく、製品やサービスに対するワクワク感や満足度の向上にも寄与する、非常に重要な要素です。これは、形ある製品に限らず、サービスやWebサイト、カタログなどの情報提供手段にも共通して言えることです。
シャープでは、ユーザビリティを品質の一部として位置づけ、製品・サービスの開発や改善において重視しています。今後は、こうした考え方をより幅広い領域に展開し、ユーザビリティの価値をさらに高める活動を積極的に進めていきたいと考えています。

―どうもありがとうございました。


シャープの製品は多くの方の声や意見があって、今の形を作っています。そして今後もより使いやすく、ユーザーに寄り添った製品・サービスの開発を進めていきます。

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