オススメの一冊(46)豊饒の海
みなさんから募集した、とっておきの書籍を紹介します。ご自身の参考や、ご家族に紹介したくなる一冊とめぐり会えるかもしれません。
三島由紀夫 著 (新潮文庫)
三島由紀夫『豊饒の海』(新潮文庫刊)
『豊饒の海』は、1970年11月25日、三島由紀夫が東京市ヶ谷の自衛隊基地で、自衛隊員へ決起を呼び掛け自決する直前に、出版社へ原稿を託した遺作です。
全4巻からなる長編で、三島由紀夫という作家の思想や美意識、人生観が凝縮された作品として知られています。
物語には、戦前から戦後へと移る日本の空気も描かれています。とりわけ第2巻『奔馬』では、純粋な理想や信念が、時代の影響を受けて過激な行動へと傾いていく姿が描かれ、現代の視点から読むと、思想や美意識が極端化する危うさについても考えさせられます。
物語の最後の舞台である月修寺のモデルとされるのが、シャープ天理事業所の北に位置する奈良市の円照寺です。三島は『豊饒の海』を執筆するにあたり、実際に円照寺を訪れて取材を行ったといわれています。
長い参道の先にたたずむ静かな尼寺で、後水尾天皇が娘のために建立した由緒ある寺院として知られています。また、生け花「山村御流」の家元でもあります。格式の高いお寺で、一般参拝はできませんが山門までは入れます。御朱印ももらえます。かつては、奈良交通の観光コース(冬)参加者だけが一般参拝できましたが、今は廃止されています。わたしは一度だけ、中へ入れたことがあり、その静けさと凛とした空気が今も印象に残っています。
物語の最後に登場する「心心ですさかい」ということばの意味は今なお謎に包まれており、読後もさまざまな解釈を誘います。
戦前から戦後へと大きく価値観が揺れ動いた時代を背景に、人は何を信じ、どう生きるのかを問いかける一冊です。
ぜひ、みなさんもお読みになり、想いをめぐらせてみてはいかがでしょうか?





