ePosterでトラック広告業を切り拓く、福間運輸さまのチャレンジ
2025年3月25日
突然ですが、こちらの写真をごらんください。トラックの後方にディスプレイが取り付けられているのが分かりますでしょうか。こちらは現在開発中のものですが、2024年夏から関西を中心にテスト走行されている、デジタルサイネージ搭載のトラックです。これから台数も増えるので、目にする機会があるかもしれません。

42型モノクロ電子ペーパーディスプレイePoster<EP-421>
これは、福間運輸株式会社さま(本社:大阪府四条畷市、代表者:福間伸一)のトラックで、広告用のデジタルサイネージとして、当社のモノクロ42型電子ペーパーディスプレイePoster(イーポスター)<EP-421>21台が採用されました。2025年4月から、通常の荷物を運びつつ、デジタルサイネージ広告も行うトラックとして本格的な実証を開始し、10台体制で全国を走ります。
この取り組みを推進する福間運輸(株)営業部長 兼 ジヲン広告合同会社代表の圖左(ずさ)篤樹さまにお話を伺いましたので、ご紹介します。

今回の取り組みの背景を教えてください。
「運送業界の2024年問題」は連日ニュースでも取り上げられ、記憶にある方も多いのではないかと思います。法改正により、従来は規制がなかったトラックドライバーの時間外労働に上限が定められました。これにより、これまで長距離を長時間運転することで高い収入が得られることに魅力を感じていたドライバーの労働環境が変わりますが、収入面ではマイナスに作用することが起きています。このような課題もあり、雇用側にとっても、人材確保に苦労する状態が続いています。
福間運輸では、このような環境の中で生き残りを賭けるべく、一つのアプローチとして、トラック広告業を立ち上げることにしました。
2023年10月に代表 兼 社員一人の小さな会社として企業内起業し、「ジヲン広告合同会社」と命名しました。最近になって、ようやく色々なところで記事に取り上げてもらえるぐらいに認知度が上がってきたところです。
どのような経緯でePosterを採用していただいたのでしょうか?
はじめは、運送業に貢献できる事業ネタを探していたのですが、大阪・関西万博(2025年日本国際博覧会)の広報戦略に「デジタルサイネージ」を活用するという話を耳にしたのがきっかけでデジタルサイネージに興味を持ちました。そこから色々な企業に問い合わせていくうちに、「電子ペーパーディスプレイ」の存在を知ったのです。
当社が設計する防振ケースの中に「電子ペーパーディスプレイ」を入れ、中に浮いた状態でトラック壁面に設置して走行するアイデアを「電子ペーパーディスプレイ」を販売しているメーカーに説明し、供給先を探したのですが、「不具合が発生した際の保証ができない」ということを理由になかなか提供が得られず、難航しました。
そんな中、シャープさんは話を親身に聞いてくださり、一緒に考えながら、最終的にePosterの供給を決定していただきました。多くの課題をクリアして、ようやくePosterの見積を目にした時には、感激で涙が出ました。
防振ケースとはどんなものですか?
トラックが走行するとどうしても振動が発生します。しかし、通常のデジタルサイネージのようなディスプレイは、静止した場所で使う設計ですので、振動を考慮していません。
そのため、トラックに取り付けて定常的に使用するためには、ディスプレイを守るために振動を防ぐ必要があり、厚さ約7㎝のケース内でePosterの揺れを抑える構造を実現しています。
実用的なレベルを確保するため、奈良高専(独立行政法人 国立高等専門学校機構 奈良工業高等専門学校)さまに相談、テストを実施し、耐久性を確認しました。

広告を広いトラックの側面ではなく、後方に表示するのはなぜですか?
運送用のトラックは荷物を極限まで多く運ぶため、車幅がすでにほぼ最大幅になっています。必然的に、新たに幅を取るものを搭載する場所は前後面から考えることとなり、後続車両の助手席の方などに見てもらいやすい後方に設置することにしました。
カラー表示できるディスプレイの採用も考えていたのですが、法規制について問い合わせていくうちに、使えない色があることや発光物は設置できないなどのルールがあることも知り、トラック後方の広告表示にはモノクロの「電子ペーパーディスプレイ」ePosterが適しているということが分かりました。
トラック後方にデジタルサイネージを掲載する場合の許可取りに関し、手探りで陸運局、警察などの関係しそうな行政機関に問い合わせ、業務用トラックの法規制や安全性確保など、さまざまな問題に直面したのですが、車両後方の表示に関する法規制や搭載物の落下防止に関する安全性についての問題などを一つひとつクリアしました。そして、ようやく2025年4月から公的な補助金を活用させていただき、本格的な実証実験ができるところまでたどり着きました。
昼間はもちろんですが、夜も後続車の前照灯でモノクロの表示がよく見え、視認性が良いのです。偶然ですが、42型というのがトラックの扉にぴったり収まるサイズでもありました。そして、後方面に設置することで、走行中の風による冷却効果もあり、夏場の温度上昇にもある程度耐えられるメリットがあることもわかりました。

どのような広告を掲載しているのでしょうか?
広告業でマネタイズ(収益化)を図り、ドライバーの給与に還元していきたいと考えることはもちろんですが、地域貢献や社会貢献の広告媒体にしたいとも考えています。
そこで、まずは無料で、福間運輸の本社に近いサッカークラブの試合予告や広告などを表示したり、広告募集のお知らせを表示したりして試走しています。
今後は、警察の春の交通安全、自治体のシティプロモーションやふるさと納税などの広告を掲出する予定です。広告を掲載したいパートナーの募集も随時行っています。

本格的な実証ではどのようなシステムで行うのですか?
シャープさんのコンテンツ配信・表示システム「e-Signage S (イーサイネージエス)クラウドサービス」と5G回線(モバイルルーター)、モバイルバッテリー電源を使って、トラックに設置したe-Posterと無線通信しています。

ドライバーには、5G回線(モバイルルーター)とePosterの表示データ書き換え用のモバイルバッテリー電源を助手席などに携帯してもらい、ディスプレイのことを気にすることなくトラックの運転に専念してもらいます。
広告コンテンツの入れ替え作業は、ジヲン広告合同会社の事務所のパソコンで行います。全国各地を走るトラックでコンテンツを臨機応変に入れ替え、即時性のあるシステム実現を目指します。

「e-Signage S (イーサイネージ)クラウドサービス」を
ノートパソコンで操作している様子
今後の展望は?
先ほども少し触れましたが、まずは、行政、自治体、NPO団体などの広告を無料で掲載し、福間運輸のチャレンジを世の中の多くの方に知ってもらいたいと考えています。その後、広告収入を増やして収益化を図りたいと考えています。
いずれこの取り組みを仲間の運送会社にも横展開して、必要経費は負担してもらいながら、広告媒体として走るトラックの数を増やして、仲間の運送会社のドライバーが運転した距離によって手当が増えるような仕組みを構築してドライバーの収入確保に繋げたいと考えています。また、バス会社などの異業種へのシステム販売を展開したいとも考えています。
広告活用以外にも、渋滞情報や天候予報など後続車両の役に立つ、安全運転につながる情報を表示できないかとも考え模索しているところです。
――ありがとうございました。
トラック運送業界は、時間外労働規制を受け、新たな収益の方策についてさまざまな取り組みが試みられています。そのような取り組みの一つであるこの広告事業が軌道に乗り、当社のePosterが物流業界の発展に貢献できることを心から願っています。
(広報C)
製品情報
https://smj.jp.sharp/bs/eposter
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