こんにちは、広報のUです。
みなさんがお使いの洗濯機はどのようなタイプでしょうか?縦型?ドラム式?容量はどれくらいでしょう?8kg?12kg?それぞれ人によって求める形や大きさは異なってくると思います。ひとりで暮らしているのか、家族で暮らしているのか。洗浄の性能や乾燥まですべてまかせられる機能など、求めるポイントは人によってさまざまですよね。
当社は11月27日(木)に洗濯・脱水容量8kg/乾燥容量4kgのコンパクトタイプのプラズマクラスタードラム式洗濯乾燥機<ES-8XS1>を発売しました。見た目の美しさだけでなく、使いやすさや環境まで考え抜いていることが評価され、2025年度グッドデザイン・ベスト100に選定されました。その思いが詰まったドラム式洗濯乾燥機のデザインを担当した川口に、開発の裏側や想いを聞きました。

デザインを担当した川口

デザインスタジオ 川口
Designer Introduction
これまでにエアコン、ドライヤーのデザインを手がけ、5年前から洗濯機を担当。今回はプロジェクトリーダーとして、製品コンセプト立案からデザインの最終調整までチームを牽引した。
―今回の洗濯機のデザインで特に意識したコンセプトは?
私たちデザインスタジオが目指しているのは、洗濯機を「家電」という独立したものから「空間に調和する家具のような存在=ライフスタイルフィット」にするというものです。質感に配慮したシンプルな佇まいで、まるでキャビネットのように生活空間に溶け込むデザインを目指しました。
―洗濯機を生活空間に溶け込ませるためにどんな工夫をしましたか。
生活空間に自然に溶け込む洗濯機を目指すにあたって、まず“家電らしさ”をなくすことを意識しました。従来の洗濯機は白くてツヤのある樹脂素材が多く、いかにも“機械”という印象が強かったんですが、今回は“家具のような佇まい”を目指して、前面に鋼板という素材を採用しました。

―なぜ鋼板を採用したのでしょうか?
空間に調和するためには、質感や存在感に優れた素材が必要で、いろいろと検討した結果、鋼板にたどり着きました。鋼板は強度が高く、マットやツヤなど質感表現の幅も広いため、空間に馴染む佇まいを実現するのに最適でした。さらに技術的な面でもメリットがあり、従来は補強のために複数のパーツが必要だった構造を、鋼板の強度を活かしてシンプルに設計できるようになりました。結果としてパーツ数の削減やプラスチック使用量の低減にもつながり、環境負荷の軽減という面でも評価され、2025年度グッドデザイン・ベスト100にも選定いただきました。

―鋼板ならではの難しさはありましたか?
鋼板は質感を多様に表現できますが、きれいに加工するにはノウハウが必要な素材です。特に洗濯機の前面のような複雑な形状には高い精度が求められます。そこで、鋼板加工に強みを持つ協業先と連携することで、素材の特性を加味した最適な仕上がりを達成することができました。
―鋼板によって実現した色と質感、意識した部分について教えてください。
今回の洗濯機は、空間との調和を重視した結果、グレイングレーとラスターホワイトの2色展開にしました。従来はダークブラウンとホワイトの組み合わせが多かったのですが、最近の住宅や、キッチンまわりのインテリアの傾向を見ていると、より色味の少ない“黒”や“グレー系”が受け入れられてきていると感じました。そこで洗濯機もその流れに合わせて、空間に馴染むような色を選びました。

グレイングレーはマットな質感にすることで、家具のような落ち着きと高級感を出せるので、幅広いインテリアスタイルにフィットします。一方、ラスターホワイトは清潔感が求められる洗面空間との親和性を意識し、ツヤのある仕上がりにしました。鋼板を使うことで、樹脂では出しにくい、しっかりとしたハイライトのある美しいツヤ感を表現できました。こうした色の違いだけでなく、質感の違いを表現できるようになったのも鋼板を使用している大きなポイントです。このため、それぞれの空間に合った選択肢を提供できるようになりました。実際に発売済みの12kgモデルでも、グレイングレーの人気が高く、今回の新モデルでもその傾向が続いています。

―続けて使いやすさへの工夫について教えてください。
操作パネルは、“誰にとっても見やすく、使いやすい”ことを最優先に考えました。今回の製品は若年層からシニア層まで幅広いユーザーを想定しているため、従来以上に視認性と操作性を追求する必要がありました。

―その“見やすさ”や“使いやすさ”をどう検証したのでしょうか。
設計に入る前にユーザビリティ調査を実施し、サイズモック(実寸のラフモデル)を使って操作位置や表示の見え方を検証しました。操作部を上面に配置することで、視認性や操作性が向上することが分かり、文字の大きさや配置も調整することにしました。調査は早い段階で複数回行い、表示内容の絞り込みやボタン配置の最適化にもつながりました。
―表示を見やすくするために、どんな工夫をしたのでしょうか?
まず数字を表示する“7セグ”※の形状を一から設計しました。技術的な制約がある中で、文字が小さく見えたりバラついて見えたりしないよう、アウトラインを整理し、限られたスペースでも出来る限り読みやすくなるよう工夫しています。特に隙間が広すぎると文字が一体として認識しづらくなるため、詰まり感や視認性を意識して形状を調整しました。
また、情報の整理(ゾーニング)にも工夫を凝らしました。必要な情報がきちんとまとまって表示されるように、関連する表示とボタンの配置を揃え、パラパラと散らばって見えないようにしています。これにより、操作時の迷いを減らし、直感的に使えるパネルに仕上げることができました。
- ※ 7セグメントディスプレイの略。デジタル時計などでよく見られる、7本の線で数字を表す表示方式。

洗濯機のデザインは、遠目で見たときの印象だけでなく、近くで使うときの“細部の仕上がり”が大きく影響します。ここから、形状の細部に込められた工夫について聞きます。
―シンプルに見せるために、特に苦労した部分はどこですか?
今回の洗濯機は“シンプルに見える”ことを目指してデザインしましたが、実はそのために細部で技術部門にかなり無理を聞いてもらっています。例えば、前パネルと後ろのパーツの高さをぴったり揃えることで、継ぎ目が目立たず、すっきりとした印象になるようにしています。端面の処理も、樹脂でキャップする方法ではなく、鋼板を巻き込んで仕上げることで、より一体感のある外観にしています。こうした細かな調整が、全体の“シンプルさ”につながっています。また、洗濯機を使っていないときは表示が消えてフラットになる“ダイレクトタッチナビ”を採用し、操作部分も生活空間に馴染むすっきりとした印象を持たせています。
―細やかな調整をするために、技術部門とはどんなやりとりがありましたか?
高さやラインの位置は、見た目の印象を左右する重要な要素ですが、構造的な制約も多く、技術部門との調整が欠かせませんでした。例えば、ドアの位置や乾燥フィルターのラインなどは、構造上動かせない部分もありましたが、できるだけバランスよく見えるように配置しました。特に天板の厚みについては、デザインとして、どうしても「より薄くしたい」という希望がありました。そのため、強度を保ちつつ、加工をするために何度も話し合いを重ねました。その結果、洗剤の投入口など複雑な構造を持ちながらも、ギリギリまで薄く、すっきりと見えるように設計しています。こうした“見えにくい部分”にも丁寧に配慮することで、全体として洗練された印象を持たせることができたと思います。

最後に、今回の経験から得られたことと、今後の展望について聞きました。
―今回の製品開発を通じて感じたことは?
今回の製品は、これまでの洗濯機の常識を一度リセットして、まったく新しいものを作るという挑戦でした。素材に鋼板を使うことで、質感や構造の自由度が広がり、デザインの可能性も大きく広がったと感じています。また、技術や企画のメンバーとの連携を通じて、細部まで丁寧に仕上げることで製品全体の印象が大きく変わることを改めて実感しました。“シンプルに見せる”ためには、実は多くの工夫と調整が必要だということを学びました。

―今後、洗濯機のデザインをどのように進化させていきたいと考えていますか?
より“空間に馴染む存在”を目指していきたいと思っています。家電としての機能性はもちろんですが、それに加えて、生活の中で違和感なく溶け込むような佇まいが求められていると感じています。今回採用した鋼板“が家具のような存在”になっていく可能性を感じています。
―ライフスタイルフィットデザインを今後どのように展開していきたいですか?
“ライフスタイルフィットデザイン”は、単に見た目を整えるだけでなく、空間や暮らしとの調和を重視する考え方です。例えば、家具のような質感や形状を持ち、生活空間の中で自然に存在できる家電。そうした製品が増えることで、家電が“暮らしの一部”としてより豊かな体験を提供できるようになると考えています。
―ありがとうございました。
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