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乾燥で、食品の価値はもっと引き出せる――シャープの「高品位減圧乾燥技術」が目指す、新しい食品づくり

2026年2月24日

著者:広報R

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 食品を長期保存するなどの目的で、乾燥させることが古くから取り入れられています。一方、「乾燥すると、味や色、栄養が落ちてしまう」食品の現場で、そんな悩みを多く耳にします。

 しかし、乾燥は条件設計次第で、素材の魅力を引き出す工程になり得ると、私たちは考えています。保存性だけでなく、見た目の色や香り、食感、栄養までバランスよく守り、新しい使い方を生み出す。その可能性を高めるために、シャープは「高品位減圧乾燥技術」の研究開発を進めています。

■なぜ乾燥するのか?

食品を乾燥させる目的は、大きく分けると次の3つがあります。

①長く安心して使えるようにするため

 食品の水分を適切に減らすと、傷みにくくなり、常温保管もしやすくなります。
 保管スペースを圧迫しないのもメリットです。

②扱いやすく、ムダを減らすため

 乾燥すると軽く・小さくなるので、輸送や保管は容易に。
 規格外の果物や余剰食材をドライ素材として高付加価値化する取り組みにもつながります。

③素材のよさを活かして、新しいおいしさをつくるため

 乾燥で味や香りが凝縮され、サクッとした食感づくりも可能に。
 見た目もきれいに保持できると、商品開発の幅が広がります。

■シャープの「高品位減圧乾燥技術」とは?

 シャープが現在、研究開発に取り組んでいるのが、「高品位減圧乾燥技術」です。食品や素材を真空(減圧)にしながら、マイクロ波で内部からやさしく加熱し、水分を効率よく取り除く技術です。低温で乾燥しやすいため、色・香り・栄養・食感を保ちやすく、乾燥時間の短縮も期待できます。また、表面からではなく内部から温めるため、乾きムラや縮みが起こりにくく、仕上がりが均一になりやすい点もポイントです。

 さらに、家庭用電子レンジで培ったマイクロ波制御とウォーターオーブン「ヘルシオ」で培った庫内の気密・熱・蒸気コントロールの知見を活かし、家電サイズコンセプトモデルを開発。試作・小ロット検証や店舗・研究用途から検討しやすい設計を目指しています。将来は食品に限らず、医療・化粧品などの分野でも活用の可能性を探っています。

コンセプトモデル
家電サイズ相当のコンパクト設計で、真空×マイクロ波の構成要素を1台に集約

■低温・短時間で“品質”を守れる理由

 理由1:減圧で水分の沸点が下がる

 真空に近い状態にすると、低温でも水分が蒸発しやすくなります。
 そのため、熱に弱い色素・香気・栄養の分解を抑え、素材本来の色・香り・風味を残しやすくなります。

減圧により水分の沸点が低下し、室温付近でも蒸発が進むため、熱ダメージを抑えた条件設計が可能

 理由2:内部加熱により、ムラ・縮み・硬化を抑えやすい

 表面からではなく内部の水分へ直接エネルギーを与えるため、乾燥ムラを抑えられます。
 熱風乾燥で起こりがちな縮みや硬くなる変化を抑え、元の形や食感を保ちやすくなります。

真空で沸点を下げ、マイクロ波で内部から加熱
蒸発した水分を効率的に排出し、低温・短時間で均一乾燥を実現

・フルーツ

フルーツの仕上がり比較 上段:減圧乾燥、下段:熱風乾燥
含水率の経時変化 減圧乾燥は室温域でも効率的に水分を除去し、乾燥時間を短縮
乾燥イチゴのビタミンC残存量比較(株式会社総合水研究所、分析番号:FB250052)
減圧乾燥サンプルで栄養保持の優位性が示唆されました

■技術をどう使うか?

 加熱と乾燥を同時に進められるため工程がシンプルになり、温度変動が少ないので乾燥度合いのコントロールがしやすくなります。素材の風味や食感を損ねにくいことは、商品開発のアイデアを広げます。

 一方、実装のしやすさも重要です。コンセプトモデルはオーブンレンジ相当のサイズで100V電源に対応。特別な工事を不要にし、試作〜小ロットの検証を素早く回せる設計を目指しました。店舗内調理や研究用途でも扱いやすく、仮説検証のスピードを高めます。

内部から温めることで、
断面方向の均一乾燥をサポート
家電サイズ相当の外観
チョコレート板の上に果物を載せ、形を保ったまま一体で乾燥した応用例

■他の乾燥技術との違い

 乾燥方式にはそれぞれ強みと適性があります。用途や狙いの品質に応じた選択が重要です。シャープの「高品位減圧乾燥技術」は、低温・短時間・見た目と栄養の保持をバランスよく追求するアプローチです。

※各方式には適性があります。本比較は代表的な条件でのイメージです。

■活用シーンの例

 乾燥の設計自由度が高まると、素材や目的に応じて価値の作り方も広がります。ここでは、実装の検討を始めやすい代表的な方向性をいくつかご紹介します。

・フードロス削減:
 規格外や旬ピーク素材の高付加価値ドライ素材に転換
・機能性/ウェルネス:
 高タンパク・ビタミン・ポリフェノール等の「保持」を意識したスナック原料づくり
・ペットフード:嗜好性・栄養・無添加志向に沿う低温乾燥

 実装検討の入口として、熱風乾燥と減圧乾燥の所要時間イメージを代表条件でまとめました。

■FOOD STYLE JAPAN 2026 <関西>出展

FOOD STYLE JAPAN 2026 <関西>シャープブース

 2026年1月28日、29日に開催されたFOOD STYLE JAPAN 2026 <関西>(インテックス大阪)に、「高品位減圧乾燥技術」のコンセプトモデルを展示しました。ブースでは、減圧乾燥と熱風乾燥の比較サンプル、いちごの香りの比較体験、実験データのパネル展示を通じて、低温で内部から真空状態で乾かすという発想と効果をご紹介。小ロットの試作検証から行えるサイズ感であることも併せてお伝えしました。

減圧乾燥と熱風乾燥のいちごにおける香り比較体験の様子

 来場者の方々からは、「見た目がきれいに保持できるのに驚いた」「フレッシュな香りが生きている」「導入サイズ感がちょうどいい」「フリーズドライの機器よりも手軽に導入できそうなのが良い」といった声を多数いただきました。

■担当者コメント

 開発担当者の白市に開発への想いと今後の展望について聞きました。

開発担当者の白市

 食品乾燥は、保存時の省エネ性(冷蔵庫のような電力が不要)や、取り扱いの手軽さ(乾燥による軽量化)といったメリットがあります。現在も食品流通で広く用いられているの加工方法の一つであり、将来の食糧・エネルギー課題への対応や、新調理技術(FoodTech)、例えば3Dフードプリンタの原料などの観点でも期待の大きい食品加工方法です。

 これらの用途の利用拡大にあたっては、色・味・香などの品質向上が強く求められています。

 今回の展示では、私たちが開発中の「高品位減圧乾燥技術」による仕上がりに対して、多くの来場者さまから感動のコメントをいただくことができました。

 今後も、この技術を用いて新たな食の可能性をお客様の手に届く形で実現していくべく、みなさまのお声をいただきながら製品像を検討していきたいと考えています。

■パートナー募集

 「高品位減圧乾燥技術」の社会実装に向け、共同研究で商品を作っていただけるパートナーを募集しています。まずは小ロットで仮説検証しながら、一緒に条件設計を進めませんか。

・自社のこの食品を減圧乾燥したらどうなる?
・減圧乾燥させた食品を使って調理したらどうなる?
・こんな加工をした食材を減圧乾燥させたらどうなる?

さまざまな疑問もお気軽にご連絡ください。

問い合わせ先:
 シャープ株式会社 Smart Appliances & Solutions事業本部 要素開発技術部
 genatsu@mail.sharp

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