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【物流について考えよう】シャープ物流お役立ち企画チームブログ 第8回:「既存の棚を捨てない」にこだわった自動倉庫づくり

2026年8月28日

著者:広報C

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みなさま、こんにちは。シャープ物流お役立ち企画チームのミヤザキです。ご無沙汰しております。少し期間が空いてしまいましたが、今回もどうぞよろしくお願いします。

前回は、パートナー企業さまの製品をラインアップに加えた経緯をお話ししました。今回はお客様の課題解決を考えるなかで生まれた自社製品「スリムスタッカー・ロボットストレージシステム」についてお話しします。とはいえ、単に製品の性能をご紹介したいわけではありません。これは、「既存の棚をそのまま使う」ことにこだわった製品で、その背景をお伝えしたいのです。このこだわりは、お客様の現場のお困りごとを伺うなかで生まれたコンセプトであり、あるお客様からいただいた一つの問いから始まりました

ピッキングという仕事

まず、前提となるお話からさせてください。

倉庫の仕事のなかで、荷物を保管場所から集めてくる作業を「ピッキング」と呼びます。作業者は指示された棚の前まで行き、荷物が置かれている間口(棚の一区画)から商品を取り出し、台車やカートに載せて次の場所へ移動します。そして、一つの出荷分がそろうまで、その作業を繰り返します。倉庫の広さ、荷物の内容や点数、保管量は現場によってさまざまです。指示に従って一つの注文をそろえるまで、台車を押して歩き回る時間が長くなりやすく、負担の大きい作業です。

私が物流について学び始めた頃、理解に時間がかかったのは、同じ「ピッキング」という言葉でも、現場によって中身がまったく違うということでした。たとえば、製造工場の部品置き場では、扱う品目がある程度決まっています。生産計画に沿って、必要な部品を決まったラインへ、まとまった数だけ供給するため、周期性があり、次に何が必要になるかも比較的読みやすい作業です。一方、EC・通販の物流センターは対照的です。扱う商品の種類は数千から数万にのぼりますが、一つの注文で出ていくのは1点か数点ということも珍しくありません。以前のブログ(第2回)で話題にした「波動」の影響も大きく表れます。作業者は、広い倉庫のあちこちに散らばった商品を集めて歩くことになります。卸や店舗向けの配送センターでは、さらに状況が異なります。ケース単位でまとまって動くものが多く、一度に運ぶ量も重さも大きくなります。

また、荷物を入れておく「入れ物」も現場ごとに違います。入荷した段ボールをそのまま棚に置いている現場もあれば、プラスチックコンテナ(プラコン)や折りたたみコンテナ(オリコン)に移し替えている現場もあります。保管する棚も、段数や奥行きがさまざまです。集め方にも違いがあります。注文ごとに棚を回って集める「摘み取り式」と、商品ごとにまとめて集めてから注文ごとに分ける「種まき式」があり、どちらが適しているかは、出荷先の数や商品の種類などのバランスによって変わります。

つまり、「ピッキングを自動化したい」と一言で言っても、その現場がどんな場所で、何を、どんな入れ物に、どのような棚に保管し、どんな頻度で取り出すのかによって、重視すべきポイントは大きく異なるのです。

自動倉庫は器をそろえることで成り立ってきた

では、自動倉庫は、こうした多様な現場にどう向き合ってきたのでしょうか。

自動倉庫の歴史は古く、1960年代からありました。それから現在までにさまざまな方式が誕生し使われてきました。棚の間をクレーンが走る「スタッカークレーン式」、棚の各段を台車が走る「シャトル式」、棚が回って荷物を動かす「回転ラック式」などです。そして近年、主流になりつつあるのが、ロボットが荷物を作業者のもとへ運ぶ「ロボットストレージ」です。作業者が歩かずに済む特長に注目して、Goods to Person(GTP)とも呼ばれます。

方式はちがっても、多くの自動倉庫には共通していることがあります。それは、専用の「器」を使うことです。多くの場合、荷物は専用のケース(バケットや、ビン、トートと呼ばれます)に入れ替えて保管します。ケースの中に間仕切りを入れ、小分けして使うこともあります。そして、この器を収める棚は均一の間隔で納めることができる専用のラックにして保管密度を高めるのが一般的です。また、ロボットが棚ごと運ぶタイプでも、棚そのものをロボット専用の形のものに入れ替えます。

機械が確実に荷物を扱うためには、形や寸法をそろえることが重要です。そのため、専用の器を使う考え方は、とても理にかなっています。実際、この「そろえる」という発想があったからこそ、自動倉庫はここまで普及してきたのだと思います。

一方で、この前提のために割り切られてきたこともあります。自動化の第一歩として、いま使っている棚を撤去しなければならないことです。そして、いま使っている入れ物から荷物を出し、専用の器へ移し替える必要があります。

「棚を、全部捨てるのですか」

「うちの倉庫には、数百の棚があります。それを全部、捨てるのですか」

ロボットストレージの導入を検討されていたあるお客様とお話ししていたとき、そう問いかけられました。棚は、毎日使われている現場の資産です。それを撤去し、専用の棚や専用のケースを買い直す。その費用も、入れ替え作業も、業務を止める時間も、すべて自動化の初期負担になります。

ここで、私たちの製品の生い立ちを少しだけお話しします。

私たちのシステムの中心にある「スリム型スタッカー自動搬送ロボット」は、もともと物流倉庫のために生まれたものではありません。自社工場の生産ラインで、装置と装置の間にワーク(仕掛品)を運ぶために開発したロボットを原型として、発展させてきたものです。棚から必要なケースを取り出し、目的の場所へ運ぶ。この動きは、倉庫のピッキングと共通しています。それなら倉庫でも使えるはずだと考え、物流倉庫用途への展開を進めていました。ただ、当初の発想は他社の自動倉庫と同じでした。専用のラックを立て、そこからプラコンを取り出す。つまり、最初は私たちも「器をそろえる側」にいたのです。

そこにいただいたのが、先ほどの問いでした。「既存の棚をそのまま使いたい」。一般的な通路幅である90cmを通行できるスリムな本体のロボットだからこそ、お客様から寄せられた問いだったと思います。そこで私たちは、技術メンバーとともに検討を重ね、この問いにどう応えるかという挑戦を始めました。

既存の棚を使うための三つの挑戦

既存の棚を使う。言葉にするとシンプルですが、実現するのは簡単ではありません。主に三つの壁がありました。

一つめは、床から10cmの高さにある荷物を取れるようにすることです。一般的な棚では、最下段が床すれすれにあります。ここに置かれたケースを取れなければ、既存の棚を使えるとは言えません。ところが、従来のロボットの構造では、この位置の荷物を取ることができませんでした。そこで、低い位置まで届く新しい機構を開発しました。

さらに、棚板の高さと箱を認識するカメラを用いて、段数や寸法が棚ごとにばらばらでも、ロボット側が見て合わせる仕組みにしました。現場に置かれている棚が一つひとつ異なる場合でも対応できるようにするためです。

二つめは、荷物の多様さに対応することです。先ほどお話ししたとおり、入れ物は現場によって違います。段ボールのまま置きたい、現場で今使っているプラコンをそのまま使いたい、プラコンと段ボールを混在させて扱いたい。そうしたご要望を伺いました。そこで、段ボールを直接扱えるようにロボットのアーム制御を工夫しました。プラコンと段ボールを同時に扱えるようにし、物流倉庫でよく使われる、手前の面が開いた「前開き」の段ボールにも対応しました。人が段ボールに手を入れて取り出していた作業を、できるだけそのまま再現したかったからです。

三つめは、大きさの異なる荷物に対応することです。専用の器を使う場合のメリットとして、扱う荷物の大きさが均一にできることで、一定の搬送性能が保証できます。一方、既存の棚に保管されている荷物は、棚の段数も異なり、荷物の大きさもまちまちです。小さな箱から大きな段ボールまであります。これらをできるだけそのまま使えるようにするには、難しい課題がありました。

先ほどご紹介した「スリム型スタッカー自動搬送ロボット」は、ケースを収納部に複数個まとめて収納し、移動しながら荷物を移載できることが特長です。ただし、収納部の段数によって置ける荷物の大きさには制限があります。大きな荷物を扱おうとすると段数が減り、例え小さい荷物が混在しても同じ数しか搬送できず搬送性能を高くできません。反対に小さな荷物だけ収納できるように段数を増やせば、大きな荷物を対象外にしなければなりません。また、段数を増やした分だけ性能が高くなるわけではなく、一つずつ作業者に受け渡すのに時間を必要としてしまうという課題もありました。

この課題を解決する手段として考え出したのが、収納部そのものを本体から分離する機構です。段数の異なる収納部を用意し、ロボットが収納する荷物の大きさに合わせて収納部を入れ替えられるようにしました。さらに、集めた荷物を収納部ごと切り離し、棚のように並べることで、あらかじめ一定量を集めておき、まとめて作業できるようにして搬送性能を保証しました。作業者の目の前には、ピッキングが必要な荷物だけが集まった棚が並びます。これにより、これまでの作業方法とほとんど変わらないまま、歩かずにピッキングできるようになります。

とはいえ、あらゆる既存の棚に対応できるわけではありません。棚の状態によっては対応できないものもありますし、荷物もすべての大きさに対応できるわけではありません。ある程度入れ物を集約したり、段ボールで補助的な入れ物をつくったりするなどの工夫が必要な場合もあります。それでも、お客様の現場の状況をできるだけ丁寧に伺い、それぞれの現場に合わせた工夫や提案ができるようになりました。

いまの現場を活かして段階的に導入

この「スリムスタッカー・ロボットストレージシステム」のコンセプトをお披露目したのは、2025年の国際物流総合展でした。その展示をご覧になったあるお客様から、大変うれしい言葉をいただきました。

「いま使っている棚を捨てないというコンセプトは、環境に配慮していて素敵ですね」

私たちの出発点は、あくまで現場の悩みでした。それが結果として、お客様の資産も資源も捨てない自動化につながっていた。そう言っていただけたことは、思いがけない喜びでした。

スリムスタッカー‧ロボットストレージシステムの活用例(動画)

既存の棚を使えるようになると、自動化の入り方が変わっていきます。

まず、一角から始められます。人が作業していた環境を大きく変えずに自動化できるため、一度に倉庫全体を変える必要はありません。自動化する範囲を決め、軽微なレイアウト変更とロケーションの入れ替えを行うことで、人手によるピッキング作業と並行して導入できます。人手作業を完全に置き換えるのではなく、現場のアイデアを活かしながら部分的に自動化し、段階的に広げていけるのです。

また、お客様から特に高く評価されたのが、移設のしやすさです。床と棚の間口に貼った2Dコード、そして棚の配置。この二つの要素で再立ち上げができます。据え付けの基礎工事を伴う自動倉庫では、移設に新設と同じだけの工数がかかってしまうことがあります。しかし、このシステムはそうではありません。数年後にレイアウト変更や拠点移転が予定されている現場でも、導入を検討しやすくなります。

自動倉庫は大きな投資を伴うシステムです。変化の激しい時代において、数年先の業務変化を正確に予測し、投資を決めるのは簡単ではありません。人手不足は確実に進み、自動化は避けられないとしても、どのような形で自動化すべきかは慎重に考える必要があります。

2024年にこのブログを始めた頃、第2回の内容のなかでインタビューした株式会社ムトウ物流 顧問の土田様から、次のようなお話を伺いました。

「一番わかりやすいところから入ることで現場のアイデアが出てきます。人が運ぶところをAGVで運ぶという原始的なニーズに応えていくところから積み上げていく方がいいかもしれません」

あのときのお話は、いまの私たちのシステム導入の進め方そのものになっていると感じています。

このシステムは、いまも進化の途中です。例えば、お客様の現場に合わせて、部分的に低い天井がある場所を通過しながら棚の上部まで活かせるようにするなど、新しい機構や工夫を加え続けています。

いまの現場には、長年にわたり、人手作業を前提に効率化するためのさまざまな工夫が積み重ねられてきたと思います。私たちは、自動化によってそのすべてを失わせたり、私たちのシステムに合わせて現場を大きく変えたりしたいわけではありません。これまでの現場の工夫の延長線上に、ロボットがある状態を目指したいのです。

現場ごとに大きく異なる「ピッキング」という作業。それでも、多くの現場に共通して存在するのが「棚」です。「既存の棚を使えるようにする」ということは、棚そのものを残すだけではありません。これまでの人手作業で培われてきた現場の工夫という資源を継承し、人手作業とロボット作業が共存するための一歩になると考えています。

これからも、お客様の現場の課題を丁寧に伺いながら、新しいご提案を続けていきます。

スリムスタッカー・ロボットストレージシステムの製品情報については下記サイトをご覧ください。
https://jp.sharp/business/agv/rss/ssrss

スリムスタッカー・ロボットストレージシステムの活用例については下記サイトをご覧ください。
https://jp.sharp/business/agv/scene/ssrss

シャープ AGV製品については製品情報サイトをご覧ください。
https://jp.sharp/business/agv

 

引き続き様々なお話を伺いたいと思います。
是非、下記メールアドレスまでお気軽にご連絡ください。
rb-plan@sharp.co.jp

私たちシャープ物流お役立ち企画チームからお答えいたします。

第7回:パートナー製品をラインアップに加える想い
第6回:総合機械商社のエンジニアに伺った話
第5回:工場内物流最適化展へ初の大規模出展
第4回:物流現場の課題を見える化するということ
第3回:物流新人が挑む、
「物流改善でお伝えしたいこと」
第2回:倉庫の自動化において
マテハンメーカーが知っておくべき課題
第1回:まずは2024年問題について感じたこと
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