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シャープの事業所に古墳が?! 希少種「ササユリ」が自生する「天理古墳 シャープの森」での環境保全とは? <生物多様性保全への取り組み>

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シャープ天理事業所で開花した「ササユリ」(2024年初夏)

当社は全国に事業・営業拠点があります。その中で、前回の大阪万博が開催された1970年に開設され、シャープの研究開発を主導する拠点が、奈良県天理市にある天理事業所です。

天理事業所には他では見られない特徴があります。何と敷地内に大きな古墳があるんです!そしてそこには、奈良県の希少野生植物に指定されている「ササユリ」が自生しています。天理事業所では、本来の役割である研究開発を進めるだけでなく、歴史的文化遺産と貴重な自然環境を守る保全活動を行っています。今回は、総務担当の横山、中内にどのような保全活動をしているのかを聞きました。   

総務担当の中内(左)、横山(右)

― シャープの敷地内に古墳があるんですね!

(中内)天理事業所があるこの辺りは、東大寺山(とうだいじやま)と呼ばれる丘陵地帯があり、約1500年前に住んでいた古代豪族 和爾(わに)氏が、「東大寺山古墳群」と呼ばれる多数の古墳を築いたとされています。現在、天理事業所の敷地となっている場所にも20数基の古墳があったそうですが、1970年の事業所開設時、保存状態が良かった3基の横穴式石室と2基の小石室を天理事業所の入口(守衛所)近くに移設しました。

移設した古墳(横穴式石室)
移設した古墳の前に設置している説明看板

― 私も1年ほど天理事業所に勤務していましたが、知りませんでした・・・。

(中内)大々的にPRしているわけではないので、事業所内で働いている従業員も、このブログを見て初めて知るかもしれません(笑)。敷地内に古墳があるのも珍しいと思いますが、実はほかにも珍しいことがあり、希少野生植物の「ササユリ」が自生しています。

― 「ササユリ」について詳しく教えてください。

(中内)日本の固有種である「ササユリ(笹百合、学名:Lilium japonicum)」は、山地の林野や草原に生える多年草です。葉の形がササに似ていることからこの名が付けられており、ユリ科ユリ属の球根植物です。6 月から 7 月にかけて白色や淡紅色の筒状の花をつけます。昔はどこにでも生えており、珍しくもなかった植物ですが、いまではあまり見かけなくなりました。奈良県の野生動植物の最新の状況をもとに選定・評価した奈良県版レッドデータブックに希少種と指定されています。自生している「ササユリ」を見られるのは貴重なんですよ。

― 自生している場所はどの辺りですか? また、いつ自生していることが分かったのですか?

(横山)先ほど古墳の話をしましたが、移設した古墳(3基の横穴式石室と2基の小石室)のすぐ近くに、2009年春、2本の「ササユリ」が自生しているのが見つかりました。その後、その近辺でも自生していることが分かりました。天理事業所の入口(インフォメーション)右手側に、古墳と「ササユリ」の自生地があります。

2009年に敷地内で見つかった2本の「ササユリ」(2009年撮影)

実は、この場所は、竹に侵食された上に、枯竹と倒竹が放置され荒廃しつつあったのですが、歴史的文化遺産の景観と緑を取り戻すため、2006年にこの一帯を「天理古墳 シャープの森」と名づけ、労使共同のボランティア団体「シャープグリーンクラブ」が、草刈りと古竹の伐採などの整備を始めました。

「ササユリ」が見つかった2009年からは古墳周辺の清掃・整備に加え、生物多様性保全の取り組みとして「ササユリ」の保護活動を行っています。

― 「ササユリ」についての取り組みを教えてください。

(中内)天理事業所内の設備・インフラの管理を行う「UTTサービス部」を中心に、自生している「ササユリ」から種を採取、「天理古墳 シャープの森」内に育成エリアを作り、そこに種を撒き、2009年より育成を進めています。しかし、種を植えれば生えるものではなく、どんな環境で育つのかも実はよくわかっていません。また、花を咲かせるまでに5年から7年以上の歳月がかかり、育成が非常に難しい植物ですが、5年後の2014年、育成した「ササユリ」の開花になんとか成功しました。

「ササユリ」の果実「さく果」(乾燥したもの)
 「さく果」の中の種
「ササユリ」の育成地

― 「天理古墳 シャープの森」での保護活動を行う上での苦労などありますか?

(中内)半年に1回春と秋に、古墳周りの清掃に加え、「ササユリ」の育成に影響を与えないよう、「ササユリ」の育成条件(日照)を一定に保つための下草刈りを行っています。さらに、枯れた竹や雑草を抜くなどの整備も行っています。

「シャープグリーンクラブ」のメンバーをはじめ、その家族なども参加して、
古墳周り(左) と「ササユリ」の育成地周辺(右)の草刈りを実施
「天理古墳 シャープの森」での保護活動を説明する中内

(横山)竹が生えているところと「ササユリ」の自生地は近接していて、放っておくと竹に浸食されかねませんし、竹が生えすぎて日当たりなど環境が変わると「ササユリ」の自生に適さなくなります。さらに、自生地の上部にある腐った竹が「ササユリ」の所にまで落ちてきて、「ササユリ」を駄目にしてしまう恐れもあります。一時期、「ササユリ」の周りの草刈りだけで精一杯だったのですが、昨年秋の活動から、チッパー(竹を刻む機械)などを用意し、思い切って範囲を拡げ、竹の伐採作業も行うようにしました。言うのは簡単ですが、実際に竹を切る作業は相当な肉体労働なので、かなり疲れました。しばらくやりたくないですね(笑)

あと、葉の形が「ササ」に似ていることもあり、間違って貴重な「ササユリ」を刈ってしまわないよう、作業には苦労しました。

昨年秋より範囲を拡げて竹の伐採活動を実施

― 保護活動への想いをお話しください。

(中内)天理事業所は、「東大寺山古墳群」がある文化的・歴史的な価値を持つ場所であり、希少種「ササユリ」が自生するだけでなく、すぐ近くの高瀬川では蛍が生息するなど、自然豊かな場所でもあります。この環境を今後も維持していきたいと思っています。

事業所近くの高瀬川など敷地外でも清掃活動を実施

(横山)奈良県には日本最古の道と言われている「山の辺の道」があります。そのうちの北コースは天理事業所の近辺を通るルートです。そこから少し歩けば、今回紹介した古墳や「ササユリ」に加え、当社の歴史を紹介している「シャープミュージアム」(要予約、入館料1,000円/人。休館日:土・日曜日・祝日・月末日)が天理事業所内にありますので、気軽にお越しいただき、当社のことをもっと知ってもらえると嬉しいです。

― ありがとうございました。


私は天理事業所で寮に入り1年ほど働いていましたし、同じ奈良県の大和郡山事業所に異動してからもよく天理事業所に行き来していました。まさか古墳があり希少種の「ササユリ」が自生しているとは露知らず・・・。

もう少し経つと開花の季節を迎えます。もしかしたら、貴重な「ササユリ」の花を見られるかもしれません。近辺にお住いの方は、天理事業所を訪ねてみてください! 私も運動不足なので、この夏は天理事業所近辺を歩いてみようと思います。

(広報H)

<関連サイト>
■シャープサイト
天理事業所アクセスマップ
シャープミュージアム
サステナビリティサイト

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