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雑談がAIを“バディ”に。シャープが挑む心地よい会話技術とは?

2026年8月25日

著者:広報H

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「人に寄り添う心地よいAI会話技術」評価システム(イメージ)と開発担当 蛭川

生成AIが問いかけに正確に答えるだけでは、人に寄り添う存在にはなれません。それでは、暮らしの中で自然に話しかけたくなるAIには、何が必要なのでしょうか。当社研究開発部門は、その鍵の一つを、何気ない雑談の“心地よさ”に見いだしました。当社は、生成AIを用いた「人に寄り添う」製品・ソリューションを展開しており、現在もさまざまな開発を進めています。その中で、当社独自のAI技術であるCE-LLM※1の一部として、「人に寄り添う心地よいAI会話技術」の開発を進めています。本技術の成果として体系化した評価基準は、本年5月に発表したテレビ「AQUOS」向け新サービス「AQUOS AI」の開発にも活用されています。また、評価基準の詳細は、本年6月に開催された「2026年度 人工知能学会全国大会※2」で発表しました。

今回は、本技術の開発担当 新庄、蛭川の両名に、開発のきっかけや着目ポイント、評価システムの概要、今後の展開などを聞きました。(*ご参考:人に寄り添う心地よいAI会話技術を開発<ニュースリリース>)

※1  シャープ独自のAI技術CE-LLM(Communication Edge – Large Language Model)。エッジデバイスにAI技術を搭載し、必要に応じてクラウドAIもシームレスに活用。スムーズで心地よいコミュニケーションを実現します。AIがより身近になり、生活やビジネスシーンに自然に溶け込む世界を実現します。

※2  一般社団法人人工知能学会(JSAI)は、日本におけるAI(人工知能)研究の発展と知識普及を目的とした学術団体。第40回を迎えた2026年度は群馬県高崎市で全国大会が開催されました。当社は2件発表し、この「人に寄り添う心地よいAI会話技術」に関しては、「対話システムにおける雑談の品質評価基準の検討および品質評価システム構築の試み」というタイトルにて発表。

 

― 「人に寄り添う心地よいAI会話技術」開発の背景について教えてください。

(蛭川)生成AIサービスが賢くなり、天気やレシピ、製品の操作方法などについて精度の高い情報を教えてくれるようになりましたが、家族や友達のような親しみを感じられるパートナーとしては、まだまだ不十分だと感じています。

当社は、家事や家電の困りごとをサポートする「COCORO HOME AI」(洗濯機・エアコン・冷蔵庫)や「クックトーク」(ヘルシオ)、AIキャラクターが一人ひとりに寄り添った対話をしてくれる「ポケとも」、テレビの大画面でAIキャラクターとの会話が楽しめる「AQUOS AI」など、生成AIを用いた家電・ソリューションを次々と展開しています。それらすべてに通じるテーマは「人に寄り添う」こと。AIを単なる道具ではなく、親しみを感じる存在にできれば、当社の家電も人に寄り添う「バディ(相棒)」に近づけるのではないかと考えました。

当社は生成AIを用いた家電・ソリューションを続々展開
(一般消費者向け製品・ソリューションの一例)

 

― 「バディ」に近づけるため、どこに着目したのですか?

(新庄)我々のチームは生成AIによる応答(会話)部分の研究を行っています。そこで、会話という観点から、「バディ」に近づけるための必要な要素について検討しました。

きっかけの一つは、当社の洗濯機向けAIサービスで実際に見られた会話でした。洗濯機の使い方だけでなく、「疲れた」「海外旅行に行きたい」といった、洗濯とは直接関係のない話しかけがあったそうです。最初は少し意外でしたが、人間同士の日常会話では雑談のような何気ない会話が半分以上を占めていると知り、なるほどと感じました。

そう思って会話を見直すと、機能に関係する質問に正確に答えるだけでなく、こうした何気ない言葉にどう温かく返せるかが、製品との距離感に影響しているように見えてきました。洗濯に関することだけを話す方に比べて、自然とやりとりする時間や会話量も多くなります。だからこそ、雑談と言えるような何気ない会話をきちんと受け止め、心地よく返すことできれば、愛着がわく製品に近づけるのではないか考えました

 

― 心地よく雑談してもらうために取り組んだことは?

(蛭川)まず、会話の心地よさを測ることに挑戦しました。私たちは、AIとの雑談がお客様にとって不快感のない好ましい内容であれば、心地よい会話として受け入れていただけると考えました。「心地よさ」、すなわち会話の「好ましさ」の評価基準の策定です。

しかし、会話の「好ましさ」を評価することは簡単ではありません。
当社の会話用AIサービスには、人から話しかけられたときの返答についての方針を指示したプロンプトが設定してあり、それに従いAIが回答を生成します。

開発段階では、このプロンプトに従った応答がきちんとした日本語になっているか、文脈を正しく理解しているかなどについて、様々な質問を試して人が一つひとつ確認し、問題があればプロンプトを修正するといった作業を繰り返します。これには多くの手間がかかるだけでなく、人によって結果にばらつきが生じるという課題もありました。

生成AIの優秀さを競う指標は数多くありますが、会話の「好ましさ」となると、日本語で包括的に評価する基準や指標が存在せず、定量的な検証・評価が非常に困難でした。
例えば、会話中に語尾が突然変わると違和感がありますよね。また、生成AIはもともと英語圏を中心に発達したため、「あなた」と呼びかけたり、名前を呼び捨てにしたりすることがありますが、日本語の会話では、そうした表現に違和感を覚える場合があります。むしろ、主語を省いた方が自然で心地よいこともあります。

さらに日本語では、文法として正しいかどうかだけでなく、話し手同士の関係性や立場に合った言い方になっているかが自然な会話をするのに大きく影響し、友人同士なら自然な言い方でも、上司と部下、親子、初対面といった関係では違和感につながることがあります。

そこで、会話に関する研究を行い、指示代名詞の扱い、会話文脈やペルソナ(キャラクター)の維持、口調の一貫性など、会話の「好ましさ」に影響する項目を抽出、体系化し、応答内容を定量的に測定できる評価基準を構築しました。さらに、この評価基準を用いた自動評価システムを開発しました。

これにより、AIやLLMが生成した応答内容を、他のLLMを用いて評価する「LLM-as-a-judge」という手法を使うことが可能となりました。AIが「どこが不自然なのか」を指摘できるようになったので、評価にかける時間を大幅に削減できるとともに、人による評価のばらつきをなくしたAIチューニングが可能になりました。

自動評価システムの開発により、人による評価から、AIで評価できるように

 

― 評価基準はどうやって構築したのですか?

(蛭川)この内容は人工知能学会全国大会で詳しく発表しました。会場では多くの研究者や企業関係者にご聴講いただき、ありがたかったです。内容を簡単に説明します。

「2026年度 人工知能学会全国大会」で発表する蛭川

まず、日常会話の心地よさに関連する先行研究を調査し、特に参考となる体系的な研究5つをもとに、雑談の好ましさに影響する評価要因を抽出しました(29種)。さらにこれを、会話として成り立っているかといった基本要因、ユーモアの好みや話題転換の好みなど人によって感じ方が変わるユーザ依存要因、画面表示か音声かなど伝える手段・形態に影響されるシステム依存要因の3つに分類しました。

次に、基本要因の9項目について、人間による主観評価実験を行い、人がどういう場合に良いと感じ、どの場合に違和感を覚えるのか、項目ごとに点数付けをしました。
この点数付けに合うように、LLMで自動評価できるよう、LLMの選定と評価基準(プロンプト)の調整をしました。

 

― 評価システムによる具体的なチューニングのイメージをご紹介ください。

(新庄)一例をご覧ください。チューニング前は、エージェント(生成AI)からお客様へ返す会話の情報量が多く、さらに質問も多くなっており、心地よい会話とは言いにくいですよね。そこをチューニングして、情報量を調整し、不要な問い詰めを減らし、さらにお客様の会話に合わせた自然な表現に修正しています。

基本的な調整のあと、会話のキャッチボールについても確認します。
実際のチューニングでは、良い会話例をAIに多く教えること自体は有効ですが、やりすぎると毎回同じような問いかけや呼びかけが出てしまい、かえって機械的に感じられることがあります。たとえば次の応答では、エージェント(生成AI)からお客様に返す会話の途中で不自然に名前が挿入され、日本語として違和感のある応答になっています。

下のグレーの吹き出し部分が、この会話の自動採点の点数と採点理由になります。ここでは不自然な名前が入ることだけでなく、機械的な印象を受けるといった評価を提示しています。

自然な会話には、相手に関心を示すことだけでなく、ターンごとの揺れや表現のバリエーションも必要だと改めて感じました。
このような評価と改善のサイクルを繰り返すことで、好ましい応答をするための精度が向上します。

 

― なるほど。効率的で使いやすそうですね。評価システムはスムーズに構築できたのですか?

(蛭川)難しかったのは、私たちが会話を聞いたときに感じる「なんとなく不自然」という感覚を、AIにも扱える評価項目に分解することでした。日本語話者としては違和感があると分かっても、それが語尾なのか、呼びかけなのか、相手との関係性なのか、会話の流れなのかを説明できなければ、AIに指示することができません。そこは、自分たちの感覚と向き合う作業でもありました。

この感覚を確かめるため、主観アンケートでは、友達同士、親子、上司と部下など、話者2人の関係性が異なる会話モチーフを用意し、モチーフごとの理想的な会話/ほんのり不自然な会話/明らかに不自然な会話を作成し、会話の自然さや好ましさを評価してもらいました。人が感じる自然さや違和感を偏りなくとらえられるようにするため、会話例は何度も作り直しました。

また、人によって敏感に反応するものと、あまり気にならないものに分かれる項目もあります。個別の項目では妥当に評価できていても、会話全体としての印象と完全には一致しないこともあり、どの項目をどの重みで見るべきかを検討する必要がありました。特に、敏感に反応されやすい項目は1つあるだけで違和感や嫌悪感につながる場合があるため、人が感じる違和感の強さを重み付けして数値化することで対応しました。

 

― 考えただけでも大変なのが分かりますね。今後の展開や想いなどあれば紹介してください。

(蛭川)基本要因については評価システムが完成しました。今後は、本システムの精度向上に取り組むとともに、会話の心地よさを高める技術として活用いただくことで、当社製品がお客様により親しみを感じられる存在となるよう貢献していきたいと思います。現在はコミュニケーション分野の専門家にもご協力いただきながら研究を進めています。基本項目よりさらに手間がかかりそうですし、体系化が難しそうですが、何とか成し遂げたいと思います。シャープの家電は、生活の中で日々使われるものです。だからこそ、操作を便利にするだけでなく、ちょっとした声かけや返答が心地よく感じられることも、製品体験の大切な品質だと考えています。そうした見えにくい違和感まで丁寧に扱うことで、シャープらしい魅力のあるAIにしていきたいです。

(新庄)寄り添うバディを目指して開発を進めていますが、将来はお客様一人ひとりを理解し、暮らしの中で必要なサポートを先回りして提供できるような存在に発展させていきたいと考えています。

「人に寄り添う心地よいAI会話技術」開発担当 (左から)新庄、蛭川

― ありがとうございました。


人に寄り添うAIの実現には、単に回答の正確さだけでなく、何気ない雑談の品質も重要であることがよく分かりました。暮らしの中で使われる製品だからこそ、「何を答えるか」だけでなく、「どのように受け止め、返すか」まで丁寧に考える必要があるのだと感じます。さらに開発を進めてもらい、シャープ製品がみなさんのバディになる未来を期待したいと思います。

(広報H)

<関連サイト>
■ニュースリリース:人に寄り添う心地よいAI会話技術を開発
■note:AIが「暮らしのバディ」になる日:シャープが目指す、話すほど距離が縮まるAI
人工知能学会対話システムにおける雑談の品質評価基準の検討および品質評価システム構築の試み(2026年度 人工知能学会全国大会(第40回)プログラム)
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