こんにちは、広報のUです。
当社は2025年9月10日に新たなコーポレートスローガン「ひとの願いの、半歩先。」を制定しました。ここには“シャープならでは”の価値を提供していく企業姿勢を表明しています。

具体的には、「誠意をもって人々の日常に向き合い、日々の困りごとや課題の中から“ひとの願い”を見出し、その願いに対して、創意をもってほんの少し先回りすることで、驚きと喜びをもたらす新たな体験を届けたい」という思いを込めています。また、そのような未来を、「誰ひとり、取り残すことなく」実現していくことを目指す姿勢を表明しています。
この「誰ひとり、取り残さない」想いをものづくりに反映するために、私たちは「インクルーシブデザイン」という考え方を学び、社内に広げる取り組みを進めています。今回は、その取り組みの一環として、聴覚障がいのあるリードユーザー※とともに実施したワークショップについてご紹介します。ワークショップを通じて社員がどんなことに気づき、そしてこの取り組みがシャープの理念「ひとの願いの、半歩先。」にどうつながっているのかお伝えします。

※ワークショップへの参加者の中で、高齢者、障がいのある人、外国人など、日常生活の中で不便や制約を経験している当事者を指します。
「インクルーシブデザイン」とは何か
「インクルーシブデザイン」とは、これまでの製品やサービス開発の中で十分に考慮されてこなかったユーザーを、設計の初期段階から当事者として巻き込み、その経験や視点を取り入れながら進める設計手法です。一般的に「ユニバーサルデザイン」が、できるだけ多くの人が使いやすい“完成形”を目指す考え方であるのに対し、「インクルーシブデザイン」は、取り残されがちなユーザーの声に直接触れることで、作り手が気づきにくい不便や課題を発見し、新たな価値や発想を生み出しながら設計していく点に特徴があります。

聴覚障がいのある方とのワークショップを実施した理由
シャープはこれまで、視覚に障がいのある方とのワークショップを重ねてきました。その中で浮かび上がってきたのが、「聴覚に関わる困りごとも、私たちはまだ十分に理解できていないのではないか」という問いでした。音や声を前提とした製品やサービスは多くあります。しかし、聞こえにくい、あるいは聞こえない状況で暮らす方が、日常の中でどんな工夫をし、どんな壁を感じているのか。それを自分たちの想像だけで理解するのは難しい。だからこそ、今回のワークショップでは、聴覚に障がいのあるリードユーザーの方々と“共に考える場”をつくることを大切にしました。
オンラインで行われたワークショップの概要
ワークショップはオンライン形式で開催しました。
・当社の社員20名
・聴覚に障がいのあるリードユーザー5名
・グラフィックレコーディング担当5名
・運営スタッフ3名
の計33名が参加し、複数のグループに分かれて実施しました。
冒頭、講師を務めていただいたPLAYWORKS株式会社 タキザワ様から、インクルーシブデザインの考え方やワークショップでのルールの周知をしていただきました。
その後、グループワークを行いました。

音声を使わないゲームを通して感じた「伝わる」「伝わらない」
グループワークはまず自己紹介からスタート。紙に文字を書くことに加え、音声を文字化するアプリ「UDトーク」も活用しながらコミュニケーションを進めました。その後は絵しりとりやジェスチャーゲームなど音声を使わない遊びを通して、「伝わらないもどかしさ」や「伝わる嬉しさ」を感じながら関係を深めました。
はじめは非言語のコミュニケーションに戸惑いがありました。ジェスチャーや絵しりとりではこちらの意図がうまく伝わらなかったり、思った以上に意味がすれ違ったり、相手の表情や反応を細かく読み取る必要があり、社員にとっては集中力を使う体験でもありました。そんな中、リードユーザーの方が場をほぐし、どのように伝え合えばよいかをさりげなく示してくださったことで、次第にやりとりが増え、グループ全体が柔らかく前向きな空気になりました。
「半歩先」の家電を考える
次に「半歩先」の家電を考えるワークを行いました。リードユーザーから普段使用している家電の使いにくさや改善点を聞き、それをどうすれば改善できるか、もしくは障がいの有無を問わず便利な家電を開発できるか、ディスカッションしました。
そして最後はそれらの製品を各グループが発表し、それぞれの開発やデザインの基礎となる考えを学びました。
コミュニケーションの難しさを体感したことで、家電や身の回りの製品に対して、障がいの有無に関わらず誰もが抱える不便や課題があることを改めて実感しました。それらを丁寧にすくい取り、より多くの人にとって使いやすい形へまとめ上げる難しさと重要性を、参加者それぞれが強く意識する機会となりました。

ワークショップを終えて、社員が得た気づきと学びについて聞きました。
障がいのある方の実情
・聴覚を使わない会話は難しく、リードユーザーの方は想像以上の不便さに直面しているのだと、はっとさせられました。コミュニケーションがうまく取れないときの孤独感を感じました。
・聴覚が使えないと、視覚情報が重要となりますが、一度に見られる場所は限られます。画面を見るか、手元の紙を見るか、など動きの制限が大きく、視覚情報だけでは見逃す可能性があることが分かりました。
「半歩先」を考えるアイデアの芽
・終了音、エラー音のお知らせも聞こえないし、製品が不具合を起こして大きな音を立てていても気づけない。どのように製品状態をお知らせすることができるのか、まだまだできることがあると感じました。
・機能を調べて購入するまでに時間がかかる、電話ではなくチャットでの問い合わせが可能か、字幕付きの使い方動画があるかを気にするというお話を聞き、商品仕様だけでなく情報発信やサービス面での改善の余地がたくさんあると、気づきました。
最後に、「インクルーシブデザイン」に関するシャープのこれまでの取り組みと今後の展望について、担当の佃と吉田に聞きます。

―シャープのこれまでの取り組みについて教えてください。
シャープは国際規格ISO9241-210に基づく人間中心設計の考え方を取り入れながら、ユーザー中心設計(User-Centered Design:UCD)に継続的に取り組んでいます。UCDとは、作り手がお客様の視点に立ち、得られた気づきや知見を設計へ反映することで、より使いやすく、満足いただける製品やサービスを実現していくためのアプローチです。
当社ではこの考え方に基づき製品開発のプロセスの中で、お客様の不満やニーズなどを調査しながら、製品の仕様や設計に反映させ、評価と改善を繰り返すことで「使いやすく」かつ「魅力的な」製品・サービスの実現を目指しています。このユーザー中心設計を基に、より多くのユーザーの願いを製品・サービスへ反映していくことを目指して、インクルーシブデザインに取り組んでいます。
―コーポレートスローガン「ひとの願いの、半歩先。」は、この取り組みにどんな意味を持ち、どう後押ししていますか。
スローガンにある「ひと」には、健常者や若い世代だけでなく、さまざまな背景を持つ多くの人が含まれています。私たちの仕事は、その多様な人々の願いをくみ取り、新たな設計や開発に生かすことです。スローガンに込めた思いを明文化したステートメントの最後には、「半歩ずつ、しっかり未来へお連れします。誰ひとり、取り残すことなく。」という言葉があります。このフレーズは、多様なユーザーの声に真摯に耳を傾け、そこから得られる気づきや視点を未来の製品・サービス開発に生かしていくという、「インクルーシブデザイン」の理念と深く結びついています。このスローガンは、社員一人ひとりが「誰一人取り残さない」という視点を持ち、日々の業務に取り組むための原動力となり、取り組みを加速させる力になっています。
―「インクルーシブデザイン」の取り組みを通じて目指す未来を教えてください。
「インクルーシブデザイン」の取り組みは、まだ始まりの一歩です。今回のワークショップは、社員が普段接する機会の少ないユーザーの声に触れ、気づきを得るための場であり、誰一人取り残さない未来を実現するための第一歩となります。今後も多様なユーザーとの接点を広げる取り組みを継続し、スローガン「ひとの願いの、半歩先。」に込められた思いを行動に移すことで、ユーザーに寄り添いながら、着実に前進していきます。
―ありがとうございました。
シャープは誰ひとり取り残さない未来を実現するために、これからもインクルーシブデザインのワークショップなどを行い、多様なユーザーに寄り添った製品・サービスの開発に取り組んでいきます。
関連記事
-
「そのデザインは誰かの気持ちを動かしているか。」
シャープデザインが実施する夏季ワークショップについてお伝えします!
(企画インタビュー篇) 2021年7月26日 -
シャープは家電だけではないんです! グッドデザイン賞を受賞した自動搬送ロボット(AGV)についてお伝えします!【後編】
2021年1月22日
-
設計からリサイクルを視野に入れたテレビの「リサイクル設計研修」を実施!
2024年12月26日
-
メタルと木目調の新しいデザインの冷蔵庫が登場!
キッチン家電を担当するデザイナーに迫ります! 2021年4月21日 -
「ここちよい」に寄り添う家電。PLAINLYシリーズ。
2019年12月23日
-
シャープの事業所に古墳が?! 希少種「ササユリ」が自生する「天理古墳 シャープの森」での環境保全とは? <生物多様性保全への取り組み>
2025年5月26日
-
「サステナビリティレポート2024」公開 - ESG経営を推進し、サステナブル社会の実現に貢献していきます!-
2024年11月21日
-
2025年度グッドデザイン・ベスト100に選定! ドラム式洗濯乾燥機のデザインはこうして生まれたーデザイナーインタビュー
2025年12月16日
-
グローバルで販売するデジタルフルカラー複合機<BPシリーズ>、開発秘話を聞きました!
2023年11月8日
-
「SHARP Tech-Day」開催中! -シャープの最新技術で近未来を体感-
2023年11月10日