インテリアに溶け込む「テクスチャーディスプレイ」とは?‐広々としたリラックス空間を実現する「次世代車載コックピットソリューション」(2/2)
2025年5月16日

前回のブログでは、「次世代車載コックピットソリューション(コンセプトモデル)」の概要を紹介しました。
今回は、「テクスチャーディスプレイ(Texture Display)」を中心に、「次世代車載コックピットソリューション」に用いている各ディスプレイについて特長や仕組みを詳しく紹介します。企画担当 上野、技術担当 渡辺・山本に話を聞きました。

― 「次世代車載コックピットソリューション」に採用した「大画面ヘッドアップディスプレイ(Panorama Head Up Display)」とは?


(上野)フロントガラスの特殊な黒コーティングされた領域にダッシュボードに埋め込まれた液晶ディスプレイ画像を高い光量で、そのまま直接投影しています。従来の小さなディスプレイの映像を拡大して投影する方式より、明るく鮮明で大画面の映像を表示させることができます。
なお、実際には、ディスプレイ画面を直接見るのではなく、映像を虚像で見せる仕組みになっています。フロントガラスの奥の虚像を見ることになるため、ドライバーが焦点をあまり動かさずに済みますし、圧迫感がない空間を実現します。

この方式は他社でも開発が進められていますが、シャープは、「Tech-Day」以降も開発を進め、今では、明るい外光にも耐えられる5,000nit※1超えの液晶ディスプレイを実現しています。
※1 nit:輝度、つまり、明るさの度合いを示す単位で、ある方向からみた単位面積の明るさを指します。国際単位(SI)系で定められた単位で、1nitは1cd(カンデラ)/平方m。
― 「クリックディスプレイ(Click Display)」は以前ブログで紹介しましたが、「次世代車載コックピットソリューション」向けに変わった部分はありますか?

(山本)デバイス構成に大きな変更はありませんが、「次世代車載コックピットソリューション」の展示にあわせて、使い勝手に影響する表面の凹凸形状やソフトウェアを大きくアップデートしました。ブログでは十字キーなどが可能としていましたが、新たにダイヤルのように回転動作での操作ができるようにしました。ダイヤル状のところを回すと、距離に応じてカチカチと本当のダイヤルがまわっているかのような触感をフィードバックします。実際のダイヤルの操作感にできる限り近づけるようこだわりました。ほかにも、指をスライドさせることで操作するスライドバー(縦・横それぞれ)も新規で実装しました。

*「クリックディスプレイ」は、以前公開したブログに詳細を紹介していますのでご覧ください。 ⇒ 近未来のデバイス「クリックディスプレイ」①/②
― 「テクスチャーディスプレイ」は、とても面白いコンセプトのディスプレイだと思います。もう少し詳しく教えてください。

(渡辺)特殊な印刷をした板状のテクスチャーパネル(フィルム/ガラスなど)を液晶パネルの上に設置することで、ディスプレイの非表示状態(電源オフ)では黒画面にならず、壁紙模様や木目模様に見えるため、周囲のデザインに溶け込ませるなどの空間演出ができます。

「次世代車載コックピットソリューション」のように車内で用いると、車内のインテリアにあわせて自由なデザインが可能です。もちろん、必要に応じて電源オンになると運転支援情報やエアコン・オーディオなどを表示することができます。
― 「テクスチャーディスプレイ」開発のきっかけは?

(渡辺)さまざまな情報がディスプレイに表示されるようになり、更に自動車のIT化により表示する情報量が増えることから、車内のディスプレイ設置面積が年々増加しています。一方、ディスプレイが増えることで情報に囲まれる圧迫感が増し、情報を表示しない場合は黒い画面がデザイン性を損なうことが課題にもなっています。これらの課題を解決するため、車内インテリアの観点から、必要な情報が必要な時だけ表示されるディスプレイが作れないかと考え、「テクスチャーディスプレイ」の開発を始めました。

― 「テクスチャーディスプレイ」の特長について教えてください。

(渡辺)特長は以下の3つになります。
- ① 電源オフ時には壁紙の質感が得られること
- ② 電源オン時には明るくて鮮明な映像が得られること
- ③ 透過性が高く、ディスプレイの消費電力や発熱が抑えられること
一般的な壁紙は映像を透過しませんが、新たに開発した技術により、模様があっても干渉せずに、映像が透過し高品位で表示されます。

― 高い透過性の仕組みとは?

(渡辺)「テクスチャーパネル」には、世の中にあるさまざまなインクや印刷方法等を検証して、壁紙の質感と高い透過率を両立する構造を採用しています。他社も類似したディスプレイを開発していますが、シャープの「テクスチャーディスプレイ」はこの独自構造により業界最高水準※2の約70%の透過率を実現しています。
透過率が高いと、高輝度化や低消費電力が可能になります。車内用ディスプレイは、建物の中と比べて周囲が明るいため、輝度が高くないと表示が見えません。そのため、透過率が高く、高輝度化が実現できること、ディスプレイからの発熱を最小限に抑えられることは、車内用ディスプレイとしては有利になります。
※2 2025年5月9日現在。シャープ調べ
― 開発する上での苦労・チャレンジなどを紹介ください。

(渡辺)電源オンで表示をさせると、表示された映像が実際とは若干違う色に見えたり、テクスチャーパネルの模様が透けて見えたりする部分がありましたが、インクの改善や印刷パターンの工夫でその課題を解決しました。

(山本)ほかにも、「テクスチャーディスプレイ」に「クリックディスプレイ機能」を実装すると、「クリックディスプレイ」内のタッチパネルのセンサ(圧力センサ)で色が少しついてしまうことがありましたが、長年のディスプレイ開発の知見を生かし何度も調整を重ねることで、何とかクリアすることができました。
― ありがとうございました。
「次世代車載コックピットソリューション」の概要と、そこで用いられているディスプレイについて、2回に分けて紹介しました。これからの自動車は、運転に関わる操作が減るので「リラックスしながら目的地に移動」することが可能になります。インテリアに溶け込むリビング空間が実現した自動車が実用化される未来を期待してください。
また、初めて紹介する「テクスチャーディスプレイ(Texture Display)」は、車載のみならず家電での活躍が期待でき、早期の商品化を目指して開発している面白いデバイスです。こちらも商品化をお待ちください。
(広報H)
<関連サイト>
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