オススメの一冊(43)百年の孤独
みなさんから募集した、とっておきの書籍を紹介します。ご自身の参考や、ご家族に紹介したくなる一冊とめぐり会えるかもしれません。
ガブリエル・ガルシア=マルケス 著 鼓直 訳(新潮社文庫)
「百年の孤独」は私が最も好きな小説の一つで、かれこれ8回も読み返している作品です。
著者のガブリエル・ガルシア=マルケスはコロンビアの出身で、日本ではあまり馴染みがないかもしれませんが、本書は世界文学のジャンルでは名作ランキングで必ず上位に食い込む常連です。
この作品の大きな魅力は、「古くから伝わる民話を現代小説の枠組みで現代によみがえらせた」点にあろうと思います。
そもそも小説はヨーロッパで発明され発展してきたもので、その根本には社会科学に基づく人文主義、つまり人間をあらゆる角度から分析する手段や表現の芸術として生まれました。おのずと当然ながら根底には科学文明に基づいた小説が多数生まれます。推理小説やSF、大衆小説、幻想小説など、いずれも現実(フィクション)/非現実(ノンフィクション)の作品に関わらず、何らかの科学要素が小説内で間接的/直接的に説明されます。
しかし「百年の孤独」はそうした科学要素自体を無視し、魔術や神話の様に科学的に有り得ない人物・現象・文物が跋扈し、それらの説明自体も省略されています。
例えば、小説に登場する「豚の尻尾を持つ子供の誕生」「昇天する女性」「5年も降り続く雨」「空中浮遊が可能になるチョコレート」などの物語です。これらは「桃太郎」「ギリシア神話」「西遊記」などに共通する空想の物語、つまり民話の形式と同等でありながら、一方で現代小説の一族絵巻・世界史・ジャーナリズム様式などを併せ持って描かれています。
当時、無名の小説家が書いたこの本は、発売当初からその斬新さと圧倒的な面白さで一世を風靡し、現代世界文学で以後の作品に最も影響を与えた作品ということで殿堂入りとなりました。奇想天外摩訶不思議で規格外の豊かな想像力に圧倒されるその作風は、文学用語で「マジックリアリズム」と名付けられ、それ以降この作風は多くの作家に模倣され様々な作品が生まれていくことになります。
皆さんもぜひ、「マジックリアリズム」の世界に触れてみてはいかがでしょうか?


