新エネ大賞「資源エネルギー庁長官賞」を受賞した『Life Eeeコネクト』サービスについて開発者に聞きました
2025年3月28日
東京都の新築戸建て住宅での太陽光発電システムの設置義務化が2025年4月からはじまります。そのほかの自治体でも検討や実施が進んでおり、太陽光発電システムを設置する住宅が多くなってきました。そして、最近はただ発電するだけでなく「発電した電力をより有効に使いたい」というお客さまが増えてきています。
そのような中、2025年1月29日、太陽光発電システムと家電や住設機器を連携して電気代を抑制するシャープのエネルギーマネジメントサービス『Life Eeeコネクト』が、一般財団法人新エネルギー財団が主催する令和6年度「新エネ大賞」(後援:経済産業省)の商品・サービス部門において、「資源エネルギー庁長官賞」を受賞しました。

今回、開発者を代表して、商品企画部門の星出、技術部部門の藤原、岡部、森に、Life Eeeコネクト(ソーラー家電連携)開発について聞きましたので、ご紹介します。

『Life Eeeコネクト』はどのようなサービスでしょうか?

(星出)『Life Eeeコネクト』は、太陽光発電システムを設置されているご家庭において、当社独自のAI(人工知能)がお客さまに代わり家電や住設機器を賢く制御して、発電を有効活用して電気代を削減するサービスです。
業界でも当社だけが実現※1しているもので、家電と太陽光発電システムの両方を長く手掛けてきたシャープならではのサービスです。家電、エネルギー機器、研究開発、ネットワークの各部門からメンバーが集まって、シャープ横断で作ったサービスなんですよ。
※1 家電を制御するHEMSサービスにおいて。シャープ調べ。(2023年11月21日開始)
2023年11月のサービス開始から約1年半が経ち、これまでに、エアコンや給湯器、冷蔵庫、ドラム式洗濯乾燥機との連携を実現しています。

連携できる機器はシャープ製のみでしょうか?
(星出)いえ、このサービスの特長でもありますが、他社製の機器とも連携することができます。給湯器は国内8社※2、エアコンは当社製含め国内5社※3の機器に対応しています。各ご家庭が重視されるポイントは異なりますし、また当社がご提供していない機器もあり、どうしてもシャープの家電だけで統一していただくのは難しいので、各社とお話をさせてもらい、きちんと評価をしてシャープから連携機能を提供し、業界全体を巻き込んで連携の輪を広げています。
※2 ダイキン工業株式会社、株式会社コロナ、日立グローバルライフソリューションズ株式会社、三菱電機株式会社、株式会社長府製作所、パナソニック株式会社、リンナイ株式会社、株式会社ノーリツ(連携順)
※3 シャープ株式会社、ダイキン工業株式会社、株式会社コロナ、パナソニック株式会社、株式会社富士通ゼネラル、株式会社長府製作所(連携順)
今回の新エネ大賞受賞のポイントを教えてください。
(星出)昼間に太陽光で発電し、ご家庭で使いきれずに余っていた電力を、独自AIによる制御で、家電・住設機器に対して有効活用し、電気代の効率的な削減を実現している点や、他社製の家電や住設機器にも適用可能な仕組みとしている点が評価され、受賞に至りました。
太陽光発電で余っていた電力を家電で活用するとはどういうことでしょうか?
(星出)太陽光発電システムが発電する時間に家電を使い、発電できない夜に使用を減らすことができれば、電力会社から買う電力が減って、電気代は下がりますよね。しかし、一般のご家庭で発電の状況を予測したり、ましてや発電がある時間に合わせて消費行動を変えたりといったことは簡単ではないと思います。このため、通常は蓄電池を用いて、昼間の発電が余ったら蓄電池に電力を貯めて、発電がない時に放電する方法が活用されています。
『Life Eeeコネクト』は、発電した電力の余る時間を当社の独自AIが予測し、家庭内の消費電力の大部分を占める、空調、冷蔵、給湯、洗濯の機器運転を、電力が余る時間に自動でシフトして電気代を削減します。
蓄電池がない住宅でも余った電力の活用を実現し、蓄電池がある住宅では「貯める」と「直接使う」を組み合わせて、さらに電気代を抑制できる業界唯一※4のソリューションです。
※4 家電を制御するHEMSサービスにおいて。シャープ調べ。(2023年11月21日開始)
続いて、エアコン、冷蔵庫、給湯器の連携を担当した各技術者に、開発時の苦労した点についてそれぞれ振り返っていただきました。
最初に連携されたエアコンの開発で苦労したことは?

(藤原)エアコン連携を担当した藤原です。
エアコンは、最初に連携を進めた機器でした。太陽光発電システムのメンバーとエアコンのメンバーが集まり、「どのように省エネを実現できるか」というテーマで議論を深めました。アイデアを出すのにはかなり苦労しましたね。はじめは、太陽光発電と連携することで何ができるのか、まったくイメージが湧きませんでした。
それでも、当社のエアコンはAIoT※5対応で、市場のエアコン稼働データを豊富に保有していたため、まずはお客さまの年間の使用状況を徹底的に分析しました。データを解析しながら何度も議論を重ねるうちに、「発電量が余るときに予熱・予冷運転を行い、発電量が減るときには緩やかに運転する」というアイデアが生まれました。さらに検討を進める中で、「ユーザーがリモコンで温度を設定している状態で省エネ制御を行うと、不快に感じるのではないか」という意見がでて、自動運転時のみ省エネ制御を行うことにしました。このような発想は、やはり太陽光発電とエアコンのメンバー両方が集まったからこそ生まれたものだと思います。
また、緩和・強化の度合いをどのように決めるかにも苦労しました。もともとエアコンはセンサーを活用し、快適な範囲内で温度を調整することで、不快感を与えないように制御されています。そのため、多くの方に試験室で実際に体感してもらいながら、最適な制御値の調整を行いました。
※5 AIoTはAI(Artificial Intelligence:人工知能)とIoT(Internet of Things:モノのインターネット)を組み合わせた言葉で、シャープ株式会社の登録商標です。

次に冷蔵庫の連携で苦労したことは?

(岡部)冷蔵庫連携を担当した岡部です。
エアコンの検討チームの取り組みの開始後に、冷蔵庫の検討もスタートしました。エアコンの着眼点を参考にしようと思ったのですが、冷蔵庫は「常に食品を冷やすこと」が基本のため、エアコンのように強めたり緩めたりする制御には抵抗があり、同じようにはできないという話になりました。
なかなか突破口が見い出せなかったのですが、エアコンと同様に市場の消費電力データに目を向け、どんなところで電力消費が大きいのかを改めて分析し、「除霜」に気がつきました。定期的に冷却器の霜を取って冷却性能を回復するヒーターの消費電力で、冷蔵庫の運転の中でも多くの電力を消費します。「除霜」を行うタイミングはある程度調整できるので、太陽光発電の余剰電力を「除霜」に使うことで、電気代を削減することができました。これならば、食品の冷却に影響がない制御であり、デメリット無く電気代の削減ができます。

自社製品のない給湯器連携の開発での苦労は?

(森)給湯器連携の開発を担当した森です。
シャープではエコキュートやハイブリッド給湯器といった給湯器を商品化していないため、エアコンや冷蔵庫と違って自社には機器のノウハウがありません。研究開発本部のメンバーにも加わってもらい、さまざまな角度から制御改善の方法を検討しましたが、なかなか良いアイデアが浮かばずとても苦労しました。そんなとき、給湯器と通信する規格『ECHONET Lite(エコーネットライト)』の制御コマンドを眺めていて、「すぐに沸き上げる」というコマンドがあることに気がついたことが突破口になりました。電力が余っているときにすぐに沸き上げを開始し、電気を買い始めると沸き上げを中断するリアルタイムの余剰電力活用制御です。この制御を従来の沸き上げ制御に組み合わせることで、さらに余剰電力の活用ができることに気がつきました。
ただ、次に問題になったのは、従来なかった制御なので、給湯器メーカー各社が評価に協力してくれるかという点でした。各社に制御内容を説明して回り、評価の協力を要請していったのですが、ちょうど電気代高騰が社会問題化し始めた時だったからか、どの給湯器メーカーも前向きに協力してくださり、無事に開発することができました。自社だけでは実現できない制御だったので、とてもありがたかったです。

最後に、今後の展望をお聞かせください。
(星出)当面の目標はサービスの利用者を増やしていくことです。営業部門と協力して、ご販売店さまを通じて、お客さまにサービスの良さをご理解いただくことに力を入れていきたいと考えています。
サービスそのものも継続的に進化させていきます。連携機器の種類や対象メーカーの拡大を進め、太陽光発電システムをこれから導入する世帯、および、既に導入していただいている世帯でのさらなる電気代抑制を実現していきます。また将来は、この仕組みを国が推進するデマンドレスポンス(DR)制御へ活用していくことで、社会全体の電力の需給バランスを調整していくことも見据えています。
この『Life Eeeコネクト』は住宅の太陽電池や蓄電池、家電が連携するエネルギーマネジメントサービスですが、当社では2024年3月に、さらに電気自動車(EV)にもつながるシステムも発売しました。このEVとつながるシステムも含めた全体を当社では「Eeeコネクト」システムと呼んでいます。

EVとつながる部分は一般的にはV2H(Vehicle to Home)と呼ばれているもので、EVの電気を有効活用したり、家の余った電気をEVに充電したりといったことができます。2024年9月に、当社から「もう一部屋」のコンセプトで提案した「LDK+」がありますが、「LDK+」と連携して、家の住空間やエネルギーマネジメントをさらに拡張・発展させていくこともできると考えています。

シャープはこれからも脱炭素社会の実現に向けさまざまなソリューションを提案してまいります。是非、ご期待ください。
――ありがとうございました。
当社は、1959年より太陽電池開発に着手し、これまで、産業用、宇宙用、家庭用などのさまざま太陽電池システムを次々と開発してきたメーカーで65年を超える実績があります。
これからも、創業者の遺志「他社がまねするような商品を作れ」※6を忘れず、他社に先駆け、世の中の役に立つ製品・サービスを作り続けてまいります。
(広報C)
※6 詳しくは、シャープの歩み:写真と音でつづる 創業者「早川徳次物語」(一部)をご覧ください。
製品情報
住宅用太陽光発電・蓄電池・V2Hシステム(個人のお客さま向け)
ニュースリリース
太陽光発電システムと連携して電気代を抑制する「Life Eeeコネクト」サービスにおいて、給湯器の連携対象機種を拡大
EV(電気自動車)のコンセプトモデル「LDK+」を「SHARP Tech-Day’24 “Innovation Showcase”」で公開
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