今年は、当社が液晶テレビAQUOSの販売を開始して20周年です。何か特別な製品が登場しないかと、一社員としてもココロ密かに期待していましたところ、32V型8Kカラーマネジメントディスプレイ<8M-B32C1>という尖ったディスプレイが発売されました。
当社は「8K+5GとAIoTで世界を変える」という事業戦略の下、8K関連製品の事業拡大に注力。これまで、8Kテレビでは、60~80V型といった大画面の製品を販売してきました。
そして今回発売した8Kカラーマネジメントディスプレイは、8K解像度の映像や画像を撮影したり編集したりする時などに使用するディスプレイで、8Kコンテンツを制作する時に重要な機器です。
32V型8Kディスプレイは、画素サイズが市販の60V型テレビの4分の1程度となり、非常に精密な製造技術が求められます。<8M-B32C1>には画素の微細化に適したIGZO※1を採用するほか、数多くの課題を乗り越え、製品化しました。
- ※1 IGZOテクノロジーのご紹介(https://jp.sharp/igzo/concept.html)
<8M-B32C1>の特長と開発について、スマートディスプレイシステム事業本部で商品企画を担当した福富、TV技術開発センターでハードウェアの開発を担当した秋葉と、ソフトウェアの開発を担当した石井に聞きましたのでご紹介します。

左から、商品企画部の福富さん、TV技術開発センターの秋葉さん、石井さん
8Kカラーマネジメントディスプレイは一般に販売されていますか?
(福富)HDR映像に対応していないカラーマネジメント用途の8Kディスプレイは市販されていますが、HDR映像に対応したものは、当社の<8M-B32C1>が初めて※2になります。開発に苦労しましたが、ようやく皆さまにお届けする準備が整いました。
- ※2 2021年6月16日、シャープ調べ。
HDRはハイダイナミックレンジの略で、明暗差の大きな映像を黒つぶれや白飛びなく再現できる映像方式です。4K/8K解像度の放送やネット動画配信サービスなどで利用されており、8Kコンテンツの制作では必須の映像方式になります。
なぜ、今、商品化されるのでしょうか?
(福富)撮影装置の話になりますが、デジタルカメラの世界が変化しています。レンズ交換式カメラの主流が一眼レフからミラーレスに変わり、デジタルカメラの動画性能が強化されています。8Kで高解像度、高画質なHDR対応の動画撮影できるハイエンドモデルも登場しました。
今、8Kカメラで撮影したHDR映像や画像を、撮影現場や編集場所で、HDRで見ながら編集するための8Kカラーマネジメントディスプレイが必要になってきているわけです。単なるディスプレイではなく、映像や画像を扱うプロやハイアマチュア向けの製品となるため、要求仕様も高く、高品質のものが求められているのです。
具体的にどのような使い方を想定した製品でしょうか。
(福富)カメラマンの「写真撮影・編集」、TVや動画配信などのメディア関係の「動画撮影・制作」、デザイナーの「デザイン・印刷」、あと、「教育・研究」などでの用途を想定しており、これらに対応する特長を備えています。
先ず、「表示性能」について説明をお願いします。

まず、「表示性能」について説明をお願いします。
(福富)8K解像度の液晶パネルは、フルHDパネルの16倍、4Kパネルの4倍の約3,300万画素を表示します。32V型で画面に近づいて見た場合、人間の目で識別できる限界がほぼ8K解像度になります。

(福富)本製品の具体的な利用環境は、卓上などの限られたスペース、例えば、デスクワークでの使用を想定しています。画面は約280dpi※3で写真プリント(300dpi)に迫る解像度で表示できますので、仮に25cmぐらいに近寄って見ても、精細さを感じていただけると思います。
- ※3 解像度を示す単位。dot per inch の略で、1インチの幅の中でどれだけのドットを表現できるかを表します。

(福富)先ほどお話しした通り、本製品はHDR(ハイダイナミックレンジ)映像に対応しています。主にテレビ放送向けの「HLG」方式と、主に映画やネット配信向けの「PQ」方式の両方のHDR映像をサポートし、両用途のコンテンツ制作に活用できます。仕様として、輝度は、ピーク1,000cd/m2 全白800cd/m2、コントラスト比は100万:1を実現、最大表示色は約10.7億色で、4K/8K放送の色規格であるRec.2020の85%の色域を再現できます
色域については、デジタルカメラの写真で使われるsRGB規格※4と印刷物で使われるAdobe RGB※5は100%、デジタルシネマで使われるDCI-P3※6では96%をカバーします。
- ※4 IEC(国際電気標準会議)が制定した色規格の標準規格です。
- ※5 アドビシステムズが制定した色規格です。
- ※6 アメリカの映画制作業界団体(Digital Cinema Initiatives)が策定した色規格です。

また、本製品は、複数のカラーモードに対応しており、モードを選択するだけで用途に応じた最適な表示設定に簡単に切り替えることができますので、多くの方に便利にお使いいただけます。

それぞれRec.2020、Rec.709となります。
続いて「表示品質」について説明をお願いします。
(福富)編集作業では色ムラや輝度ムラを抑えた表示が重要で、カラーマネジメントディスプレイに求められる均一性の高い高品位な表示を、当社独自の「SHARP Advanced UCCT(Uniform Color Calibration Technology)」技術を搭載することで実現しました。
この技術は複数画面構成で設置するインフォメーションディスプレイの製品開発で培った技術をもとにしています。

ディスプレイは使っているとどうしても経年変化で、画面の明るさや色味が変化してしまいます。これを補正するために、本製品は市販の測色センサーを使ったハードウェアキャリブレーション(調整)に対応し、高品位な表示を維持できる機能を搭載しています。

(福富)これらの基本機能のほか、映像の撮影・編集時に便利な機能として、「輝度クリッピング」「色域外警告」「ピーキング」「フォルスカラー」「マーカー」「モノクロ/ブルーオンリー」を搭載しています。
※各機能の詳細については、製品サイト(https://jp.sharp/business/color-management-display/lineup/8mb32c1/)でご確認いただけます。
次回、後編では開発のお話をハードウェア開発担当の秋葉さんとソフトウェア開発担当の石井さんに聞きます。(広報C)
【後編】すごいぞ!32型8Kカラーマネジメントディスプレイ!へ
映像作家 鈴木佑介氏による製品レビュー
製品情報
32V型8Kカラーマネジメントディスプレイ<8M-B32C1>
https://jp.sharp/business/color-management-display/lineup/8mb32c1/
8Kカムコーダー<8C-B60A>
https://jp.sharp/business/8k-camera/products/8k-camcorder/
Dynabook社製8K映像編集PCシステム
https://dynabook.com/business/contents/8k-video-editing-system/index.html
ニュースリリース
32V型 8K液晶ディスプレイを発売
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